2012年5月31日木曜日

増税・・? 緊縮・・?

アメリカの大統領選挙は予想通り、オバマとロムニーの戦いとなっていますが、敵対的広告も可能なアメリカでは、相手の悪い部分を責めるという「敵失を穿る広告戦略」が常に取られます。これは所謂ネガティブ・キャンペーンと言われるものですが、次の YouTube ビデオは民主党のオバマを責める目的で作られた共和党からのネガティブ・キャンペーンの一つです。




このキャンペーンのコンセプトは、「失望」です。
オバマ登場時に抱いた未来への期待感が大きかったこともあって、厳しい現状に直面している人たちに「あの時の期待値とのギャップ」を認識させ、「このままではいけない・・」と、方向転換を図らせようとする意図が見えます。

  • 今も同じように子供たちはバスケット・ボールで遊んでいる。
  • でも、その子供たちに未来を描かせる仕事がない。
  • 働いている私たちでさえもリタイアするお金がない。
  • 彼(オバマ)は変化(チェンジ)を約束した。「YES, WE CAN」と。
  • でもアメリカはもっと借金まみれになってしまった。そして更に増税しようとしている。
  • 私たちが期待したチェンジとは・・・
と共和党の政策に導くような流れに成っています。

まあ、相手を責めることは容易でも、では「それでは、貴方はどうするのだ!」と問われればその答えがない。それが今の世界の現状です。誰も解決策を持てない状況に陥っているとしか言いようがありませんね。

以下は、ユーロッパにおける若年層(25歳以下)の失業率を示した図です。ドイツ以外は 20% を超えています。まあ、ギリシャは言うに及ばず、スペイン、ポルトガル、イタリアも仕事がないということが、一目瞭然です。



とにかく、若者の失業率がこれほど高くなると未来へ向ける意欲や、社会環境を肯定する意識が薄れて健全な社会が失われていくようで怖くなってきます。ここでも創造的破壊のようなものが求められているのかも知れません。

また、アメリカではこうした状況に加えて将来的に更に暗い影響を及ぼすと考えられる問題があります。それが学生ローンの増大という現象です。



米国における学生ローンの負債額は $867 Billion で、既に車のローンによる負債額やクレジット・カードの負債額を超えています。そして、その額は年々増加しています。米国の学生は大学を出た時点で既に大きな借金を背負っていることになりますが、それでも以前は大学を卒業したことで得られるメリットも大きく、企業に高収入で採用され、早い内にローンを返済できると言われていました。

しかし、現在(2012年)ではそうした大学を卒業した者でも就職に在りつける割合が約 50% しかありません。高い学費をローンで組んでも仕事がなければ意味がないという状況となっています。特に米国の学生ローンは個人破産しても免除されません。そのため生涯その返済を迫られることになります。

仕事がないままで、負債を抱え、ブラブラしている若者が増え続けることは国力そのものを失っていく結果ともなっていくでしょう。未来は非常に暗いと言わざるえません。

アメリカ各州の財政状況が悪化し(特にカリフォルニアは最悪)、さらに連邦レベルでの財政も危機に瀕している状況のアメリカでは「政府が破産する」という瀬戸際に追い込まれていますが、それでも雇用創出のための景気策を繰り出さなければ「増税」を簡単に国民は認められないでしょう。

さあ、では、どうするのか?
もちろん、こうすれば良いというような案が私にある訳ではありません。しかし、これまでの定説や理論が本当に正しいのか、特にマクロ経済理論は現在の世界の状況を既に説明できないのではないか、これまでの常識に捉われることこそが失敗を重ねる原因なのではないか、と疑ってみることも必要だと感じています。
  • 高齢化の問題は、結局は養うべき人が増えるということ。
  • 人口が急激に増加する地域があるということは、将来の養うべき人の増加と共に、雇用確保のための政策が必要になるということ。
  • グローバル化するということ(グローバル化してしまったということ)は、国境を越えて賃金の安い処へ仕事が流れるということ。
  • マネーは既に国境を越えて移動可能であるということ。
  • インターネットの普及により、世界中どこからでも仕事が出来る環境が更に整備されていくということ。
  • コンピュータ技術の発達により、個々の作業の生産性はこれからも上がり続けるだろうということ。
  • そして、未来のアフリカ地域が現在の中国のような「世界の工場的機能を果たす」までにはまだ時間がかかるだろうということ。
生産性が上がれば、同じ供給量をさらに低コストで生み出せます。結果として企業は利益を生みますが需要が同じであれば雇用は増えません。同じことを賃金の安い地域で行えば更に低コストが図れますので、企業はコスト面での競争力を持つことが出来ます。従って企業は競争相手に勝つために更に賃金の安い処を探し、開拓し続けることになります。

「チョー単純化して」考えれば、この繰り返し作業は地球全体の生活コストが一様化するまで続くことになります。つまり、グローバル化することによって地球全体が究極の社会主義化の方向に進み、人類の生活は最終的に一様化することとなります。ここでいう一様化とは大雑把な意味ですので、その中でも利権・権益を持った一部の富裕層は極めて大きな富を得ることとなり、ごく一部の「スーパー富裕層」と、その他の世界的に「一様化された貧困層」とに2分されることになります。


「一様化された貧困層」の生活レベルは、世界の GDP の半分を僅か数 % の「スーパー富裕層」が獲得すると仮定すると、(世界の GDP * 50%) / (世界の人口) 位になるのでしょう。

アフリカやその他の貧困地域から見れば随分と裕福になったと感じるでしょうが、現在の先進国で生活している者から見れば、とんでもない生活レベルの低下になると思われます。

「チョー単純化」した話ではありますが、現在の世界の状況はこの流れであると言えます。「スーパー富裕層」は完全にグローバル化されていますので、その眼には国の区別はありません。従って、どの国の貧困層という認識ではなく、全体として貧困層が存在すればそれで良いということになります。

雇用とマネーが簡単に国境を越えてしまう状況になっているのに、各国が個別の税金処理や、国債の発行、景気対策、個別の法律で運営しているのでは、全体という現実を表していない無駄な処理に時間と労力をかけているだけになってしまいます。

どれだけ国内向けに景気対策を打っても、その資金が海外に流れ、更に安い賃金で生産されて国内に戻ってくるのでは国内に雇用は生まれません。逆に低価格商品が市場に出回ることで、他の競合企業が潰れ、雇用は更に失われることになります。儲かるのは、海外に出た企業ですが、その国での売上に対する税金が元の国に戻ってくる訳ではなく、外貨のままで国外に蓄積されることとなります。つまり、元の国の国民は頑張っても頑張ってもデフレの罠から逃れられないことになります。

結果として、税収が足らなくなり、収入が増える見込みがないにも拘らず「福祉のため」という綺麗ごとに惑わされて「増税する」という「馬鹿な政策」に帰着することになります。

バケツの底に穴があいて水がドボドボと漏れて流れ落ちているのに、バケツに穴がないことを前提とした政策を続けているようでは悪い結果しか生まれません。残念ながら水は高い方から低い方へ流れますので、漏れた水がバケツの外側に溜まって、元のバケツの水位と同じになるまで水は流れ続けます。その穴を塞がない限り漏れは止まりません。結果としてバケツの水は空っぽになってしまうでしょう。

極論的ですが、生産性が 5倍になった場合、マネーの供給量も同じく 5倍にしなければ生活水準を維持することは難しくなります。もし人口が 2倍になれば、同じくマネーの供給量も 2倍になる必要があるでしょう。国外へ流れ出た資金で生産し、その製品を販売して得た利益は、元の国へ必ず還元されなければ収支が合いません。また、その生産に関わった他国の作業者の収入からも所得税を徴収するような考えも必要かもしれません。

このような「とんでも論」を言うと、「そんなことをしたらハイパーインフレになって大変なことになる・・」と言われそうですが、リーマンショックの後、世界中(日本以外)がマネーを刷りまくってきましたが、ハイパーインフレなど何処にも発生していません。数字としての各国政府の債務が増加しているだけです。これは各先進国のバケツに穴が空いているからでしょう。

日本の場合(日本の財務官僚)はこの数字を「国の借金」という言葉で国民を騙して増税しようとしていますが、正しくマネーが回っていないのに、この数字の部分だけを捉えて国民に無理を強いるのはもうほとんど犯罪ですね。相手が無知なら幾らでも騙して良いと言っているようなものです。

それでも、ギリシャの不真面目さと、怠慢、自分勝手な考え方や、エエとこどり体質に対しては、「まあ、ちっとは我慢しろ!」と言いたくなりますが(ギリシャ人はあんまり働かないのよね、実際に・・)、数字だけが膨らむ今の世界の状況の中で、偏った論理による緊縮財政をユーロ各国に強いるのはやはり問題でしょう。ユーロ体制を守るならドイツもバケツに穴をあけて皆と一緒に生活レベルを下げなければいけません。そうでないなら今の世界の論理の間違いを認めるべきです。

とにかく、古典的な一国を基準した論理ではもう説明できないところまで私たちは来てしまったのでしょう。そう考えれば、グローバル化を進めた「ごく一部の世界のスーパー裕福層」に我々は上手いこと騙され、知らないうちに搾取される奴隷の身分となってしまったとも言えます。しかし、世界のからくりがもっと沢山の人に知られ、世界の人々の見識が高まってくればこうした大きな問題も解決する方向へ向かうでしょう。と、少しだけ期待しておきます。


2012年4月30日月曜日

トレンドの変化はもう止まらない・・・どこへ?

前回は丁度新型 iPad の好調な売れ行きが始まった時期の記事でしたが、その後 好調な Apple の決算数字が発表され、あらためて時代の変化を実感しています。


Apple が 4月24日に発表した四半期決算の数字は、純利益が前年同期比 94%増の 116億ドル(約9430億円)、売上高は前年同期比 59%増の 392億ドル(約3兆1800億円)という結果でした。数字を牽引したのはやはり iPhone で、その販売台数は 3510万台を数え前年同期比 88%の増加。また iPad の販売台数は 1180万台となり前年同期比では 250% も売れています。

また、この Apple の決算数字は株式市場全体にも大きな影響をもたらしています。今年第1四半期(1~3月)の米企業業績はそれまでの予想をくつがえして健全な様子を見せています。S&P 500企業の第1四半期の利益予想は、0.9%増とされていましたが、実際には前年同期比 6.3%増となる見込みで、その結果を受けて各アナリストは本年度後半の予想を上方修正しています。

しかし、この好調な数字を作った要因の一つが Apple 1社による予想をくつがえす業績であったという事実は更に驚くべき内容です。もちろん Apple 以外の多くの米企業が好調な数字を出していることは間違いありませんが、Apple の数字を全体から除くと全体の利益の伸びが、6.3% から 4.2% に下がります。

株価の面でみても、Apple 1社だけで、S&P500指数を 5.85ポイント押し上げた計算となっています。これは全上昇幅の約 3分の1 が Apple によってもたらされたことになり、現在の米国市場では、米国全体の株式会社の健全性を理解するためには、S&P500から Apple を除外してみなければいけないという考え方が生まれています。

それ程の好決算をたたき出している Apple ですが、今後市場に製品が行き渡ってしまい販売が頭打ちになるという懸念はないのでしょうか?
 
どうもその心配はなさそうですね。Apple の地域別売上高から見ると、米国市場からの売り上げは Apple 全体の約 3分の1 であり、その他の地域の打ち上げの中で特に中国市場での iPhone の売り上げが前年同期比で 5倍になっていることから、頭打ちが予想される地域以外での伸びが今後も極めて大きいと予想出来ます。



Apple のアジア太平洋地域での売上高は中国市場が好調なため、前年同期の 2倍以上に伸びています。これは iPhone を取り扱う業者にチャイナ・テレコム(中国電信)を加えたことが影響しているようですが、将来的に見て現在では世界最大の携帯通信業者となったチャイナ・モバイル(中国移動)が Apple の通信事業者として参入してくれば、更に大きな市場が見込めることになります。

米国は中国をかつての日本のように世界の工場として発展させて来ましたが、ここにきて工場の役割から消費材を購入する市場へとターゲットを変えてきているようです。


Apple の好調な数字に合わせてもう一つ最近発表された数字があります。


Kindle Fire で低価格タブレットの市場を攻めている Amazon は今年第1四半期(1-3月)の純利益が前年同期比 35%減少したと発表しています。Amazon は現在も将来の収益確保のために多額の投資を続けていることが利益を落としている原因となっています。最近では 3月にロボットメーカーであるキバ・システムズを 7億 7500万ドルで買収するという発表もしています。殆ど全ての分野への展開を図る Amazon は特にその配送システムの善し悪しが利益を左右する事を重視し、配送網の効率化のためにロボットメーカーそのものを手に入れて梃入れするという考えですね。

ロボット配送システムは、倉庫係が商品の棚のところに行く代わりに、商品の載った棚を倉庫係のところに持って来ます。つまりロボットが注文に従って、商品を探し、倉庫内で商品を移動させ、梱包するのを手伝います。ロボットは以下のビデオでも見られるようなオレンジ色の立方体で、在庫棚を頭上に積み重ねて物流センター内を勢いよく走り回ります。




こうしたロボット技術はその昔は日本のお家芸のような技術だったのですが・・・、今はどうなっているのでしょうかね。私がロボット技術に関わっていた20年以上も前に同じようなシステムが既に日本にはありましたが・・。そういえば、あの福島原発の事故処理にもアメリカのロボットが使われたりして、製造装置として使われる NC マシン(工作機械)としての日本の技術は確かにドイツと並んで世界のトップにありますが、応用分野としてのノウハウはもう完全に世界にリードされてしまっているようです。

もちろん日本は明らかに平和利用という範囲でしか技術開発を行えないという手枷足枷(自縛)がはめられていますので、展開できる分野や範囲が制限されています。私が日本食料品を買いに行くときに横を通る iRobot もロボット技術の世界では大きな力を示しています。こちらは軍事利用の範囲もあり、考え方・見方によってはやはり恐ろしい技術でもあります。




詳細は以下の Web でも見てください。http://www.irobot.com/us/

そのような設備投資に励む Amazon ですが、Kindle Fire が 2012年 2月現在で、米国の全 Android タブレット中 54.4%を占めているという調査結果が出ています。(次の図を参照)




Kindle Fire は単なる Android タブレットではなく、Amazon の電子書籍リーダーであり、映画などの電子コンテンツのリーダーであり、かつ、Amazon の小売商品を購入する端末でもあるという市場そのものを取り込む戦略的位置づけの商品であるというところが他の Android タブレットを展開するメーカーと大きく異なるところです。

価格を $200 以下に抑えられたのも Kindle Fire そのもので儲ける必要がないことが大きいのですが、たとえ 1台当たりで数ドルの赤字が出ているとしても(今後の量産効果とコスト削減の取り組みで改善されるでしょうが)、Kindle Fire を買ったユーザーが数点のコンテンツを Amazon から購入すれば損失分は取り戻せる範囲であるということ、また Kindle Fire の購入者はその後安定した Amazon ユーザーになる可能性も高いため、将来に渡っての商品購入の窓口を作るという未来に向けたビジネスは着々と進んでいるようです。

Kindle Fire をこの価格帯で世界展開されると、低価格タブレットの領域ではもう「普通の企業」は誰も勝てそうにありませんね。ここでいう「普通の企業」とは、その商品単体で利益を上げなければならないという宿命を背負う企業、つまり「普通の企業」です。これには Samsung、Motorola、Asus、Del、Sony などの殆どのメーカーが含まれます。

Amazon に勝負できる企業として上げられる候補は、その製品単体以外で十分な収益を稼ぎ、かつ、製品単体との相乗効果を図れる企業、つまり  Google のような企業しかないでしょう。最近の Kindle Fire の売り上げを横目で見ながら、Google が低価格タブレットの販売に乗り出すというニュースは既に出回っています。

Computerworld の記事


それでも Google の新しい低価格タブレットが成功するかどうかは分かりません。しかし、低価格帯は Kindle Fire のような製品、そして高価格帯は iPad でほぼ決まっていくと見ています。特に企業内における iPad の浸透は目覚しく、「企業で使うタブレット=iPad 」という構図は今後ますます定着するのではないかと予想しています。

以下の図は、米国でのワイヤレス電子メール・ベンダー「Good Technology」による調査結果ですが、企業内で使われているタブレットはほぼ 90%以上が iPad であると示されています。iPad の持つ機能性と実力を考えればビジネスユースでの活用は納得できますね。個人で所有するには少し高めの価格ですが、企業が業務用ツールとして活用するのであれば投資効果は抜群に高いと言えるでしょう。


さて、ここで大きなトレンドとして何があるかを考えて見ます。

もちろんスマートフォンの普及は当たり前となっていますが、同じような操作性(タッチパネル)を持つタブレットが更に市場に浸透して行く事で、日常活動で必要とされる殆どの操作がこうした移動可能な端末で行われることとなり、WiFi 技術の家庭内への普及に合わせて IT メーカーがこれまで幾度となくチャレンジしながらも攻略できなかった「家庭内のリビングルームの征服」が実現されるだろうということです。

「家庭内のリビングルームの征服」とはこれまでの一家団欒の場に必ずあった TV というものがタブレット端末にリプレースされ、大型 TV はシアターの方向へ向かい、情報やこれまでの TV 番組はネットを介して手の中にあるタブレットから場所を選ばずに入手されるというスタイルに変わっていくでしょう。

ソフトウエアのターゲットはもう既に PC ではなく、タブレット端末となっていますが、今後はデーターを保管するためのクラウドの充実が図られなければなりませんね。クラウドにはまだまだ懸念事項がありますが、それでもその活用によって収益を上げる企業の割合がある閾値を超え始めると、クラウド化は一気に進むと考えられます。

既に TV を見ない世代が増えていますが、TV の電波に情報を流しておけば国民の意思をある程度まとめて操作出来た時代は終焉を向かえ、個人個人がその趣向や志向に合わせて情報を選択し判断できる時代が漸く始まるのだと感じています。私たちは知識や情報がなければ正しい判断が下せません。まして、間違った情報しか得られなければ間違った結論を出してしまいます。故意に間違った情報を巧妙に流して国民(人類)を騙してきた世界の支配層の闇(秘密)が公になることこそが、21世紀の本当のイノベーションになると思っています。




2012年3月22日木曜日

トレンドの変化を捕まえることが未来を作る

さて、昨日の Apple の発表によると、新 iPad の発売第 1週の実売台数は、なんと 300万台 となってようですね。この数字や新 iPad の目玉である新しいディスプレイの性能・品質に関しては既に多くのニュースで皆さんもご存じだと思います。


確かに新しいディスプレイはこれまでの中でも最高の鮮明さであり、色表現もほとんどの家庭用 HDTV より優れています。現在のあらゆるディスプレイの中で最高品質であると言っても良いでしょう。それでも iPad の売り上げについて消極的な見方が専門家の中にもあったのですが、見事にそうした予想を覆してしまいました。


アナリストの推計から前作 iPad2 の発売第 1週の実売台数は、50万から100万台の間だろうと言われています。ということは昨年の約 3倍の実売数でそのスタートを切ったことになります。

タブレット市場全体を見ると、米 Apple の昨年 10-12月期のタブレット出荷台数は前年同期比 2倍超増加し好調に伸びていますが、それでも Apple の世界シェアは 7-9月期の 61.5%から 54.7%へと低下しています。これはインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムが 10-12月期に「キンドル・ファイア」を 470万台出荷し、16.8%の世界シェアを獲得して 2位に入ったことと関係しています。ちなみに 3位の韓国・サムスン電子のシェアは 5.8%となっています。




これはあらゆる価格帯のタブレットが売れているということであり、かつ、電子ブックリーダー市場も同じように拡大しています。電子ブックリーダーの世界出荷台数は 1070万台となり前四半期比 65%、前年同期比でも 64%の増加を示しています。

この流れ(基調)は今後も続き、更に加速されるでしょう。Apple の iPad に代表されるタブレット市場が今後どのような方向で社会を変えていくか、単純に製品の技術や品質という面からの分析ではなく、使い方、将来のユーザーの受け入れ方、文化的な視点を加えた楽しみ方等のトレンドを探り、また流れを作り出した者が未来の勝者に成れるのでしょう。

また、Apple は同社の 1000億ドル近い現金の使い道について発表しました。1株当たり 2.65ドルの四半期配当を支払うと共に、2012年 9月から 100億ドルの自社株買い戻しを開始するということですね。これによって Apple は米国最大級の高配当企業になり更に株価が上がるのでしょう。

ちなみに Apple がこの前配当を払ったのは 1995年で、その時は 1株当たりたったの 12セントだったのですね。1990 年代に Apple の株を持っていた知り合い(女性)がいて、「もうすぐ潰れる(倒産する)ような会社の株を大事に持っておいても何の意味もないよ!」「どうせ紙くずになるのだから売り払って今日の飲み代にしたら?」「いや、その飲み代にもならないかなあ・・」などと揶揄したことを思い出しました。もし彼女があのまま Apple の株を今まで保有していたら・・・彼女は大富豪になっているのかも? と今更ながらに世界の変化の激しさに驚きます。

Apple はこの配当支払いと自社株の買い戻しで、外貨の本国還流に対する国内税の支払いを回避できるという節税対策も同時に行うことになります。このあたりは最近の米国政府の動きを読んだ対策でもありますね。

iPad の世界を製品調達という側面でみると、ここでも Apple の未来を先取りした企業戦略が垣間見れます。


今では恒例となりましたが、Apple 製品を購入後すぐに分解してその構成部品を調べ、製造原価を予想するという分析結果が既に出回っていますが、その情報によると、LTE 方式の高速通信サービスに対応した 32GB版 iPad の部品原価は 364.35ドルで、これに製造コストが 10.75ドルかかるということらしいです。ということは同モデルの販売価格 729ドルに対して部品はその約50%を占めていることになります。



ディスプレイの原価が最も高く推定で 87ドル、LTE 通信チップは 41.50ドル程度だと言われています。どのようにしてこの数字をはじき出すのか、私には分かりませんが、iPad の複数のモデルに対してこれらの主要部品の原価は同じであることを考慮すると、ストレージ容量の違い(16GB、32GB、64GB)によるメモリー原価の変化と販売価格の変化から、より安価なモデル程その原価率が高いことが分かります。つまり高価格モデルが売れるほど Apple は儲かるという仕組みになっているということです。

分析結果が示しているのはその原価構成だけではありません。Apple は新型 iPad の部品調達先を分散化し、コスト削減と安定供給の確保を目指していることが分かります。主要部品に関して言えば、同一機能の部品を少なくとも 3つのサプライヤーから調達していようです。

これは、調達を分散化させてサプライヤー間の競争を促し価格を抑制させるだけでなく、日本の大震災やタイの洪水被害のように特定のサプライヤーからの供給が止まった場合へのリスク対応にもなります。

今回の iPad の目玉でもあるディスプレイの調達先は、サムスン、LG、シャープの 3社となっていますが、残念ながら初回の iPad 出荷分にはシャープの液晶ディスプレイは使われていないようです。関係者の証言では、シャープは昨年末頃から Apple へのディスプレイ納品を開始する予定でしたが、Apple の厳しい要求に製品を対応させていく過程で問題に遭遇し、納品が遅れたらしいということです。しかし、次の大量出荷(今月分)からは出荷できそうだということです。

シャープの新型 iPad 用ディスプレイの製造は、昨年開発した新しい液晶画面技術を採用し、三重県の工場で生産されていると言われています。同じ買うならシャープのディスプレイを搭載した iPad にしたいものですね。


また、このような新しい技術を応用して、Apple だけでなく ASUS や Motorola などにディスプレイを供給し、市場そのものを更に活性化させて全体の価格を押し下げるような世界規模での量産効果を生み出して欲しいものです。そのことによって注目するポイントがディスプレイの良さからもっと異なった使い勝手や便利さに移り、痒い所に手が届くという日本企業の良さで勝負できる体制へと進んで欲しいと思います。

Apple の部品調達戦略が特殊な訳ではありません。Apple に限らず、世界のリーディングカンパニーが日本企業の技術を採用する場合の方法論がここに表れています。常に他企業(特に韓国企業)と競わせて、価格を低下させながらも技術革新を促進させると共に、地政学的な分析からリスク回避も同時に行うという方法論は、様々な分野で実施されています。電気自動車に対応するリチウム電池の調達なども、Panasonic の価格を押し下げるために韓国産の電池を常にぶつけるような仕組みとなっています。


しかし、残念ながらこうした戦略を円高環境下の日本と、ウォン安環境下の韓国との間でやられると日本企業はたまったものではありません。

日韓の為替レートは、5年前は 1円 = 8ウォンでしたが、現在では 1円 = 13.5ウォンで、約70% の円高となっています。また韓国は国策で電力料金が日本の半分以下に設定されています。日本のメーカーはこうした韓国メーカーと競争させられる中で次第に世界市場でのプレゼンスを失っています。

現在では超円高から少し円安に推移して、1ドル 83円 前後で動いている為替相場ですが、まだまだ日本企業の動きは抑えられた状況です。少し前のように 1ドル 95円から100円程度まで円安が進めば、世界中に日本製品が溢れることになります。これはこれまでの日銀の政策および政府の政策そのものが日本企業を潰してきたということです。

政府および日銀の無策は先日の「エルピーダの破綻」という事態を引き起こしました。「日の丸半導体」の破綻の原因が全て円高であるとは言い切れませんが、米国、欧州、中国と日本以外の全ての国が通貨安政策を取る中で、唯一日本だけが円高を放置してきたことは事実です。


「脱デフレ」と国民に向かっては言いながらも、日銀も官僚も政府も実質デフレ政策を20世紀末から続けてきました。これはデフレ政策によって見た目の物価安定を図ることができると共に、名目金利を抑えて日本政府が金利で苦しまないように問題を先送り出来るからです。また、銀行は国民から預かった資金を国債で運用するだけで大きな利益が入ってくるため、民間企業への貸出などを本気で行う理由が無いため経済は停滞することになります。

日銀も官僚も政府も自分の立場、それもほんの目先の立場さえ守れれば良いだけで、民間企業が潰れようが、中小企業の経営者が行き詰って自殺しようが「そんなことはどうでもいい」ということでしょう。「円高が嫌ならとっとと日本から出ていけ」と言っているようです。

このブログで何度も書いていますが、彼らは自分たちの「身分」さえ守れれば良いだけで、国民のことなどは何も意識していないのでしょう。それでも選挙の時だけは「シロアリ退治」などと聞こえの良いことを言っていましたね。


現在の円安(75円と比較すれば円安)と株高基調へ転換した真の原因は、日銀が申し訳なさそうに「1%のインフレターゲット」(いや、日銀は「目安」という言葉を使っていましたね)を示したからです。日銀生え抜きの白川総裁が 1% に言及したのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が 2%のインフレ目標をこの 1月に決めたからですね。


その時のバーナンキ FRB 議長の発言では、「インフレ率が今後数年間、かなり低水準になるとの見通しを示唆する複数の要因が存在する。(具体的には、商品相場が横ばいになりつつあること、賃金圧力の抑制、インフレ期待が十分抑制されていること)」「長期的なインフレ率は主に金融政策によって決定されるため、FOMC はインフレの長期的な目標を具体的に定める能力がある。」 と述べています。


これを日本市場に当てはめて別の言い方に変えると、「日本銀行はこれまで、デフレを脱却する力を持っていながら、日本銀行が誤った考えで仕事をしていたために、日本の不景気は長引いている。」ということになります。このままでは日銀の失策が明らかになってしまうため、その後慌てて・・囁くように・・「1%のインフレ目安」を表明しました。これに市場は大きく反応し、円安基調、株高基調へと方向が転換されたということです。

インフレターゲットを示すと必ず「ハイパーインフレ」を言いだす御用学者や評論家が出現します。しかしここまでデフレが進んだ現状で真のインフレに市場が振れるまでには長い時間がかかるでしょう。その間にやれる政策は幾らでもあります。その点に関しては FRB も 2014年から 2018年の間に調整が入るだろうと述べています。

世界市場では常識となっている政策も「身分」を保証された日本村の官僚や政治家には理解できないのでしょう。円安に誘導するために数兆円もの円売りを行っても結局何の効果もなかったのですが、世界の常識に合わせて「1%・・」と囁いただけで基調が変わりました。そのような政府や財務省が強引に推し進める消費税増税にどのような根拠があるか教えて欲しいものです。

今の状況で消費税増税したら大不況になることは誰にでも分かる常識です。

昨年の大震災の後、日本政府はただちに復興増税に踏み出し、続いて何故か訳の分からない消費増税の大幅アップを決意し、野田首相は国民の意見など完全に無視して勝手に増税の国際公約までしています。

デフレなのに更にデフレを悪化させる増税路線を進むということは、廻り回って「モノや設備に対して価値が上がる円債が買われる」ことに帰結します。つまり増税路線を表明すればそれだけで異常な円買い投機を誘うことになり、短期国債が買われ、引き続いて中長期国債の利回りも低下することになります。結局円が買われることになり、円高がさらに進む訳です。

このまま消費税増税したら、せっかくの円安基調も水の泡となり、消費マインドは下がり、結局税収は大きく低下して更に国民の生活は追い込まれるでしょう。それでも大手マスコミは財務省、日銀、政府の単なる広報機関ですから、「増税しないと大変だ!」と消費税増税のキャンペーンは止まらないようです。しかし、デフレ基調が緩み穏やかなインフレへと振れれば景気が上昇し、結果として税収も増加します。株価が上がって景気の先高感が出れば国債は売られ株が買われる方向へと変わっていきます。そう考えると野田首相の「何が何でも消費税増税」とは何を意味しているのか、「何が何でも日本を沈めたい、潰したい」と言っているように聞こえます。


しかし、現実はそのようなことも分からないまま、財務省の官僚に言い包められてただただ「官僚のレクチャーをコピーしている」のでしょうね。野田首相にしても安住財務大臣にしても政治家の出来の悪さはもう絶望的です。官僚にしてみれば「こんなの簡単に洗脳できる」というレベルでしょう。

シロアリ退治を切々と訴えて当選した首相が、平然とそのシロアリの手足となって働く姿は「国民不在」「選挙無意味」「選挙は見せかけの茶番」を証明しています。


高橋洋一氏が言っているように、「増税すれば財務省の利権が増える」「増税すると軽減税率の陳情が来る」「官僚は個別に陳情を処理しそこに利権を作る」「それは最終官僚の天下り確保になる」これが消費税増税の本当の狙いであり、「身分」を保証された者だけが未来永劫に栄える仕組み作りを思考能力のない民主党政権の間に完成させたいという戦略でしょう。そこには我々国民の幸福などは描かれてはいないようですね。

日経関係誌は今では政府や財界の御用新聞のようなもので当てにならないことも多いのですが、日経ビジネス・オンラインの<高橋洋一氏が反論!「その消費増税論議、ちょっといいですか」>では、的を得た内容が書かれています。

今回のタイトルは「トレンドの変化を捕まえることが未来を作る」でしたが、途中で円高、増税の方に話が向いてしまいました。「トレンドの変化」については次回にまわすこととします。