2009年9月は日本で政権交代が行われた歴史的な月と言えます。日本の政権交代に関する欧米での論調は「まあ・・しばらくは・・様子見かな・・」と言う感じに映っています。日本のニュースやブログでは、鳩山首相の国連演説での「温室効果ガスの25%削減」に対して賛否両論を織り交ぜた意見が飛び交っていますが、米国での論調は「まあ、何か言ったようだが・・本当に大丈夫なの?」というある意味懐疑的な受け止め方のように感じています。
確かに鳩山首相の演説に対して大きな拍手が起こりましたが、「拍手」=「称賛」ではない
ということも国際社会の常識ですので、それを真に受けると「相手の思う壺」にはまってしまう危険性もあります。そういった面を良く捉えながらしっかりと外交を行っていく必要があるでしょう。
鳩山首相は東京大学工学部計数工学科卒業、スタンフォード大学工学部博士課程終了ということで、米国やその他の魑魅魍魎の世界についてもう少し分かっているのかなと思っていましたが、今回のスピーチでの表現では「将来上げ足を取られる」可能性もなきにしも非ずですね。
鳩山首相の国連スピーチの重要な部分は以下のところです。
"For its mid-term goal, Japan will aim to reduce its emissions by 25% by 2020, if compared to the 1990 level.
(ここにもう一文挿入されています)
The commitment of Japan to the world is premised on agreement on ambitious targets by all the major economies."
「将来上げ足を取られる」可能性もなきにしも非ず・・というよりももう既に日本は 25% の削減をするということを公約してしまったように世界中で報道されています。
本来は、
premised on agreement on ambitious targets by all the major economies
という部分を使って世界に条件を付けたつもりだと思いますが、世界はそんな風には解釈してくれません。
せめて、
As long as all the major economies agree on ambitious targets, Japan will commit our goal to aim to reduce its emissions by 25% by 2020.
位にして欲しかったですね。鳩山首相は、一番最初に「25% の削減」を表明し、その後一息いれて「1990 年と比べて」と言う風にスピーチしました。拍手は 25% の時点で上がったのですが、その後もう一つのセンテンスを挟んで、次に公約について述べています。それも、まず公約します・・そして・・・ならば・・と最後に条件を付け足したような順序での表現でした。
本来ならば「米国や中国や・・・が日本と同じように数値目標を掲げるのであれば・・・25% 削減も夢ではないかも知れない。日本はそのような国際合意の上に技術開発を展開する用意がある・・・」というような感じで表明したら、拍手は上がらなくても「リーダーとしての自覚がありそうだなあ・・」という認識になったでしょうけどね。そして 1990年比と言う部分は相手に突っ込まれる迄はあえて言わない・・実際どれ位削減できるかどうかは分からないのですから。
どのような内容でも全てを交渉の材料にして自国を有利な立場に持っていく世界の魑魅魍魎達と対峙するには、一つの表現の違いで大きな負担を強いられることを前提に対策を立てておかなければなりません。物凄い技術改革でも起これば別ですが、そうでなければ日本が苦労して長年に渡って開発してきたエコ技術や資金をタダで差し出すだけになってしまいます。
鳩山首相はこれまで欧米とケンカしたことはなさそうですね、残念ながら・・。
この鳩山首相のスピーチと対照的に中国の胡錦濤国家主席は・・・2020年までの中期目標として、2005年比で二酸化炭素(CO2)排出量を「顕著な幅で削減するよう努力する」と表明しています。
二酸化炭素の排出量を抑えると言う事は、新しい技術が開発されない限り、様々な産業の生産量を下げるということと等価ですから、経済発展を狙っている国は到底飲めない条件ですよね。そうした状況の中で各国がどう調整を付けるか・・という戦いの中で日本をどれくらい有利な位置に置いておくか・・これが今求められている戦略です。
また、オバマ大統領は、気候変動問題への取り組みの意思を反映して、これまでの米国の政策を大きく転換し、気候変動問題は最優先事項だと強調しています。しかし、世界経済がこの数十年で最悪の景気後退から回復していることから、今後、気候変動問題への取り組みには厳しい道のりが待っている・・と語っています。オバマ大統領はこれまでの発言の中で「中国やブラジルなど・・・」が合意するならば・・というような言葉の使い方をしていますが、このような文脈の中では決して「日本」という国の名前は出しません。
これは婉曲的に「鳩山首相の案には乗らない」というメッセージなのですが、分かっているのでしょうか?
これは即ち premised on agreement on ambitious targets by all the major economies の部分に米国は同意しないということですが、それでも 25% という数字は残るのですね。
世界は何時も逃げられる道を確保した上で、相手の逃げ道を塞いでくるのですね。そのためなら幾らでもリップサービスしてくれます。鴨がネギと資金と技術をしょって世界に出てしまったということにならないよう注目して行きましょう。
そのことと、CO2 削減のための技術開発とは別のものです。世界の環境のために新しい技術、有効な理論や方法などを作り出していけるのも日本の持つ大きな力であり、これはきっと日本にしか出来ない様な高度な内容だろうと思います。そのことを否定するものではありません。しかし、これまでの中世から近代の歴史と同じように日本の多くの努力や資金が「盗まれる如くに」持って行かれることは避けたいものです。
国連で注目される事よりも、日本国内の産業が確実な発展をすることの方が遥かに重要です。このことを分かっておいて欲しいと思っています。
アメリカ経済の話を・・・と思っていましたが、何だか国際政治の領域に入ってしまっていますが、とにかく今はこれがホットな話題なので、ついでにもう一つ・・。
日本では鳩山首相のスピーチが大きく取り上げられていますが、実際の世界のニュースでは残念ながら殆ど(ゼロに近い)報道されていません。現在の国連の話題で大きく報道されているのは、リビアの最高指導者カダフィ大佐の国連総会での初演説と、核開発問題が焦点となっているイランのアフマディネジャド大統領の演説です。これらは CNN でも殆どノーカットで全編流されていました。
カダフィ大佐は制限時間15分のところを1時間半も喋っていました。たまたま CNN を見たらカダフィ大佐が出ていましたので、暫くその発言を聞いていました。その内容に付いてここで論評はしませんが「面白い、正直だ、その通りだ・・」と肯ける意見が盛り沢山でした。カダフィがこのように国連に来て演説できるのも、世界の構造が変わり始めている証拠ですが、こうした流れが広がる中でこそ本当の世界の平和や調和が生まれるということなのでしょう。
政治と経済には切っても切れない関係がありますが、米国が最近保護貿易の方向へ向かっている例として、中国製の格安タイヤへの関税問題があります。これが貿易摩擦に発展するかどうかは今後の成り行きを見ないと分かりませんが、このタイミングで出てきたことに注目しておく必要があります。
このタイミングでの関税処理には「鳩山政権の誕生に対する米国の挨拶」という面が含まれていると思われます。鳩山首相の母方の祖父は世界最大のタイヤメーカー「ブリヂストンの創業者、石橋正二郎氏」であることは良く知られていますが、ブリジストンのタイヤはもちろん米国でも大きなシェアーを持っています。「米国企業が窮地に陥るならば関税を強化することも排除しない」というメッセージは中国に送ったものですが、それは同時に日本の鳩山首相にも向けられているということですね。「だから・・まあ、仲良くやろうじゃないか!・・分かってるよね!」ということでしょう。
米国人の「つわもの」は何かのプロジェクト等を行う場合に、相手を持ち上げてリップサービスすることと同時に、ある点に付いて「あれは駄目だよ!・・」と強いメッセージを出して全体の運営に釘を指したりします。そしてその指摘した点を絡めてプロジェクトを進めるようにし、話の主導権を取って行くのですね。「そのことを言われるとしょうがないなあ・・」とこちらがその点に理解を示したら相手のペースに乗せられます。タイヤの件が WTO で揉めるか、有る程度で「シャンシャン」と終わるかでその真相は分かるでしょう。
CO2 の 25% の削減を本当に称賛している知識人や学者もいますが、誰がそれを行うのかを良く考えておかなければなりません。実施するのは日本社会であって、称賛してくれている米国やヨーロッパやその他の国の元首や学者ではありません。そういった方々は日本の努力の恩恵を受ける側だと言う事を知っておくことです。
さて、米国の経済については、米連邦準備制度理事会(FRB)は23日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開いた後に声明を発表し「米景気が回復を示し始めた」と事実上の景気底打ちを宣言しています。FRBのバーナンキ議長は先週「景気後退は終了した可能性が極めて高い」との見解を示しました。しかし、高水準が依然続く失業率が今後の景気回復に暗雲を投げ掛けているとも述べています。
玉虫色表現と言えば良いでしょうか、「回復をし始めた」「終了した可能性が高い」ということですが、まあもう少し様子を見なければならないでしょう。指標的に見て改善の兆しが見えるのでしょうが、ちょっと上がり気味だった株価は今日の時点では「下がりぎみ」です。それでも米国発の世界恐慌という事態は金融機関への物凄い資本注入を繰り返して何とか回避出来たのかも知れません。
この9月はリーマンブラザースが昨年に破綻してからちょうど一周忌に当ります。この1年間の米国経済の動き(データー)をチャートで見ると「なんと凄まじい状態であったか」が何となく分かります。

上図は資産担保証券(Asset Backed Securities; 以下ABS と表記)の発行額を示しています。サブプライム問題が表面化したころから、ホームエクイティローンを裏付資産としたものを中心に急激に減少し始め、リーマンショック後にはほぼ機能停止状態となっています。09 年に入り、徐々に発行額は回復してきていますが、なお水準はかなり低いと言えます。住宅価格は引き続き弱含んでいる下で、ホームエクイティローン関連の ABS 市場に改善の兆しは見られない。 <----- というのがその筋の専門家の意見です。
「赤い枠」のところで殆ど機能停止状態となっている事が分かりますね。最近の細かい動きでは「緑の枠」のように少し持ち直しているのかもしれません。

上図は商業用不動産価格と住宅価格の動きです。これを見ると右端の「緑の枠」の部分で少しだけ改善の兆しが見られると言えるのかもしれません。
米国の住宅価格はケースシラー住宅価格指数に代表されるように、底入れを探りつつあるようです。しかしながら、商業用不動産価格の下落はなお続いており、警戒感が拡がっています。商業用不動産の価格下落の背景についてみると、まずは企業倒産やコスト抑制意識の高まりを受けて、オフィス空室率が上昇するなど商業用不動産の需給軟化が進んでいることが指摘されています。このほか、家計のB/S 調整に根差した消費の低迷が、ショッピング・モールなどの採算性を悪化させていることも影響していようです。 <----- というのがその筋の専門家の意見です。

では次に主要商業銀行の不良債権比率を見てみましょう。
シティーグループ、バンク・オブ・アメリカ、JP モルガン・チェース、ワコビア、ウエルス・ファーゴ、という主要銀行の不良債権はしっかりと拡大している事が分かりますね。
これについては、米国主要商業銀行の不良債権比率は上昇しており、中小銀行の延滞率も上昇しています。とくに、後者は収益基盤が脆弱な先が多く、さらには総資産に占める商業用不動産向けローンの割合が住宅ローンの割合よりも大きく、かつ大手銀行のそれよりも大きくなっています。そのため、問題金融機関、破綻金融機関ともに大幅に増えているのが現状です。企業の借入需要の低迷もあるが、金融機関の B/S の悪化を受けて、銀行の貸出残高も減少を続けているようです。 <----- というのがその筋の専門家の意見です。


2008年以降に問題を抱えている銀行が異常に増加している事が分かりますね。また、実際に破たんした金融機関も 2008年から 2009年にかけてえらい事になっています。それでも直近の3カ月で見ると破綻金融機関は減りつつあると言えそうです。

ちなみに上図は「失われた10年」と言われた時期と重なる日本の不良債権の状況です。不良債権の比率が下がると共に、銀行の貸出残高が増えている事が分かります。当時(赤い矢印の頃)は銀行の「貸し渋り」と「貸しはがし」で特に中小企業は大変な状況でしたね。ちなみに私もこの赤い矢印の時に「死にました」。
オバマ政権はこのような異常な経済状況の中で社会主義とも言えるような政策を立て続けに実施し何とかここまでやって来たと言えます。しかし、安心できる要素はまだ殆どありません。資金の注入は何時までも続かないし、輪転機でドル札を印刷し続けたことによるドル暴落の危険性は大きくなっています。
さて、ここにきて米国の国民は「政府には頼れない」ということを自覚し始めたようです。
ガイトナーは「US の預貯金(銀行の現金残高)は、2008年の初頭では、1.2% だったが本年の第2四半期(4,5,6月)の預金残高は、5% になった。アメリカ国民は教育にもっと投資が必用だ。世界の教育をリードする位置を再び手に入れるために」と語ったというニュースがあります。これは米国がこれまでの「世界中から資金を借りて消費する経済」から「普通の国が普通に生きて行く経済」になって行こうとしていると考えられます。
将来のために投資を梃子にして消費するのではなく、貯蓄して自らを守るという方向に変わりつつあるということですね。直ぐに全てが大転換することは考えられませんが、米国が貯蓄経済に向かうということは世界の消費市場が無くなるということでもあり、経済危機が其れなりに収束してもかつての様な市場には戻らないということを予想しておかなければなりません。
もちろん新しい市場が地球上に現れればそこで世界の経済を回す事が出来ますが、そうでないならば各国は内需を掘り起こして自己防衛をしなければこれまでの生産設備や要員を保持できないことになります。将来を作るのはやはり教育ですから、教育関連に絡むような製品開発やサポート・サービスなどに注目して行く必要があるかも知れませんね。
風の便りというか、これまで言われてきたネット上の噂によると、この9月30日頃に米国のドルは崩壊し世界がえらい事になるということでした。まだ一週間程余裕がありますが、そのように噂が流れるほど金融市場は厳しい内容を持っていると言えるでしょう。まだまだ予断は許しませんが、何とか世界が調和を保った状態で経済が推移するようにと願っています。
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