2009年12月23日水曜日

2010年に向けてトレンドを探ってみる - クラウドとソーシャル

さて、トレンド予測の第二弾はやはり「クラウド」です。しかし「クラウド」を単なる SaaS の現実的な展開形と捉えるとそれは日本のトレンド予測となってしまいそうです。米国のトレンドはどちらかと言うと「クラウド」を活用した「ソーシャル」、「ソーシャル」のための「クラウド」というような展開を見せています。

まず、日本で捉えられている「クラウド」の定義は概ね次のようになります。

クラウドとは、「IT に関わるさまざまなリソースを、ネットワークを通じてサービスとして利用する形態のこと」

これはこれで間違いないのですが、これだけではやはり「ハードウエア」というか「システムの構成や運用方法」だけに目が行ってしまい、IT システム部門をクラウドにアウトソースして費用対効果を向上させることが主たる目的となってしまいます。これだけではシステム側の視点でしかなく、アプリケーション・・すなわち使う側の視点が含まれていません。

日本のクラウドの記事や論調を見ていると、「プライベート・クラウド」にしても「クラウド・インテグレーション」にしてもやはり IT ベンダーがデータセンターの設置やサーバールームの構成など、何から何まで準備して結果としてユーザーを囲い込んで行くような展開策が感じられます。というか、まだその状態で将来を論じているようです。

米国でもデーターセンター系のクラウド展開は既に大規模に行われていて、Google が運用している大量の検索サーバーも、Microsoft のサーバー群も全てクラウドだと言えますし、HP や Oracle そして Cisco などもそろって大規模データーセンターを運用しています。

クラウドという世界を現実の物にしたのは、インターネットの利用目的を Web アクセスによる情報の検索・表示から、実際の業務運用に耐え得る現実的なアプリケーションの活用という世界に変えた Salesforce.com だと言えますが、この展開方法はその後 Amazon.com の Amazon Web Services や Google Wave の登場に繋がっていきました。では、そうしたクラウド上のアプリケーションが今後一挙に市場を抑えるようになるのでしょうか? 確かにクラウド環境を上手く活用できれば、IT 部門に毎年かかってくるメンテナンス費用や構成要員に対する教育費用などを削減出来るでしょうから有る一定の効果は見込めます。しかし、それだけの為に現在既に構築され運用されている既存システムをリプレースすることは難しいでしょう。

その反面、スタートアップ企業が、最初から経費節減と要員不足を補うために「クラウド・アプリケーション」を活用するということは十分考えられます。どちらにしてもこれらはクラウドの消極的な見方だと考えられます。

今米国で流行っている物は何か・・・それは Avatar(アバター)だ!
いや、それはそれで正解なのですが、ちょっと話題違いですので、言い直すと・・それはやはり Twitter と Facebook ですね。



現在の世界のソーシャルの本命は Facebook で、リアルタイム Web の本命は Twitter だと言えます。もちろん将来もっと凄いのが出てくる可能性はありますが、現状はこの 2つが非常にホットな領域にあります。

以下の図は現在のソーシャルネットワークの勢力地図ですが、一目で分かるように Facebook 帝国の容赦ない拡大が続いています。



ユーザー数 3億5千万人以上といわれる Facebook が英語圏の SNS のリーダーであることはもう間違いありませんが、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アフリカにも既に大きな勢力が出来ています。ロシアを守っている Vkontakte.ru は Facebook のクローンと言われていますが、その資本関係から間もなく Facebook と融合するのではないかと囁かれています。日本はお馴染みの MIXI で、中国は QQ となっていますが、言語と文化の問題もあってこの2つには当分大きな変化は起きないだろうと考えられます。

2009年に入って急激にフォローワーを拡大した Twitter はクラウドの立役者ともいうべき Salesforce.com を感化させています。Salesforce.com は最近そのアプリケーションの中に Chatter という名の Twitter に類似した機能を搭載させています。



これは業務アプリケーションの中でメンバーが「つぶやき」を発し、誰かがそれを「拾う」というもので、これまでの対象相手を特定してメッセージを送るという概念から、不特定な対象の世界に「つぶやき」を流し、それに対して情報や解決策を持っている者が対応するという新しいメッセージングの概念が業務アプリケーションに統合されたものとなっています。

ここで表れている世界は、運用するシステムをクラウドに持って行くことで費用を削減するというシステム・リプレースの発想ではなく、クラウド環境であるからこそ出来る新しい方法論を実務で生かして更にビジネスの効率を上げると言う攻撃的なクラウドの利用法だと言えます。

注目すべきはクラウドをどのように活用して、どのような新しいサービスを生み出すか、これまでにない付加価値を本業のビジネスにどれだけ付加出来るか? というところです。

設計業務の中にソーシャルなメンバーの参加を許し、製品設計の段階からユーザーの声を聞くという方法論もクラウドならではの展開策ですが、製品リリース後のフィードバック情報もその製品に対して発せられる世界中の「つぶやき」を自動集計出来るようなクラウド・アプリケーションがあれば、一々アンケートをお願いしたり、メールで情報を送ってもらったり、企業の Web を通してコメントを書いてもらったりしなくても良いことになります。

自社内の従業員や関係企業で働くメンバーだけで構成される世界では、プライベート・クラウドによる要員管理や業務システムの運用で十分であり、自社サーバーでの狭義なメンバー管理やアクティブ・ディレクトリによるプロファイル管理で運用を賄えますが、ファイアーウオールの外側にいる一般のお客さんや、顧客となりそうな予備軍までを含めてビジネス情報を共有しながら収益に繋がるシステム運用を考えるとなると、ソーシャル・ネットワーク側のクラウドと繋がることが一番効果的な運用であり、そこで流れる生の情報をどのようにビジネスに結び付けるかが次の重要なテーマになってくると考えています。

クラウドは経費節約のために行うのではなく、これまでにない新しい顧客サービスを生み出すために取り組むべき仕組みだと言えるでしょう。米国では業務アプリケーションとソーシャルな Facebook とそこに付随するアプリケーション、そしてリアルタイムな情報源としての Twitter のつぶやきを統合した新しいサービスが 2010年には沢山現れるだろうと予想しています。



Twitter の「つぶやき」を単なる「つぶやき」だけだと認識していると実像を見失うことになります。Google も Yahoo も Twitter の「つぶやき」をリアルタイム検索の中に逸早く取り込みましたが、「つぶやき」のインパクトは Google の検索結果をも吹き飛ばしてしまう可能性を持っています。今のところそれはまだ「可能性」ですが、今後どう成って行くかは分かりません。

「つぶやき」と「Web 情報の検索」ではその時間的な優位性が大きく違います。「つぶやき」はリアルタイムですが「Web 検索」は該当する情報(キーワード)が Web 上に掲示されないと意味がありません。つまり、誰かが HTML を作ってサーバーにアップロードするまで検索の対象にはならないということです。

情報が出現する時間の問題だけでなく実態をどう捉えるかという面でも違いがあります。Web 検索の世界では、気持ちは「好き」でも「好き」だと Web 上に情報を上げない限り誰にも「好き」だということは分からないということです。これは、もし Twitter の情報が適切に集計されるようになると、Twitter の集計内容と Web 検索で収集された情報との間に内容の差がある場合、Twitter 情報の方が実データとしての価値(信憑性)が高いという結果となり、顧客分析や、市場動向、アンケートなどに対する優位性を Twitter が Web 検索結果から奪うことになっていきます。

実態を Twitter 情報が握っているとなると、ビジネス広告や顧客獲得のための様々なアプローチが Google から Twitter へ移動するという現象も発生するでしょう。つまり Twitter は Google のビジネスを横取りする可能性が出てくるということです。もしそうだとすると 勢い Twitter を買収しようとという誰かがやってくる可能性も見えてきます。
 
 

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