健康保険改革に先だってオバマ大統領は米国の輸出を今後5年間で倍増させるという政策を打ち出しています。つまり、米国をかつての強い製造業をもった国にするということです。これまで一般的には、米国は既に多くの製造業を海外へ移設し国内は空洞化してしまっていると認識されています。
事実、エレクトロニクス(家電)分野などは80年代に日本企業に押され殆ど壊滅的な打撃を受け、最近では低価格領域では中国製品、液晶やテレビ部門は韓国製品、高級家電では日本製品に市場を押さえられています。
車産業は言うまでもなく、ビッグ3が弱体化し、トヨタ、ホンダ、日産などの日本車、最近では経済不況の中、韓国車がその販売を伸ばしています。
家電や車という業界の落ち込みが激しいため、アメリカにはもう強い製造業は無く、金融分野のみで生きているようなイメージがあってオバマの話は「今のアメリカに本当にそのような力があるのか?」と感じますが、良く観察すればその可能性はまだまだ十分にありそうです。
日本が得意とする分野は、暫くすると韓国、そして中国がその技術を模倣しながら追いつき追い越していくのがこれまでの歴史ですが、日本が得意でない分野においては米国がリードしているものも沢山存在します。

まず、航空産業(ボーイング、BAE、グラマン、レイセオン)、NASA 代表される宇宙産業、バイオ関連の技術、製薬関係、圧倒的なソフトウエア産業(マイクロソフト、アップル、オラクル、IBM、HP)、半導体(INTEL、AMD、nVidia)、暗号化技術、ネットワーク関連(CISCO、EMS)、インターネット関連(Google、Amazom、eBay、Yahoo)、そして軍事技術・兵器産業、などなど強い世界が沢山あります。

こうした産業を積極的に支援し、その配下の中小企業まで支援を広げるという政策が今後積極的に展開されるならば、オバマの言う強いアメリカが復活するかも知れません。
以下のビデオは少し前(3月11日)に行われたオバマの「輸出奨励イニシャチブ」のスピーチです。彼の話を聞いていると、「うーん、実際にアメリカは強くなるかも知れんなあ!」と思ってしまうところが何とも不思議です。
これが単なる人気取りのスピーチではないことは、これまでの情報からも判断できます。米国がサブプライム・ローン問題でつまずき、一気に景気が下向いた頃から少しずつですが製造拠点を米国内に戻すような動きをする企業が増えてきました。米建設機械大手キャタピラーの動きはこれを如実に表しています。
米国は日本の進出を「プラザ合意」で潰した後、何でもかんでもオフショアーで生産し、安い製品を国内に流通させてばら撒き(国民を安心させる)、経済的には金融商品をバブル化させてその利ザヤを稼いでいましたが、その考え方が機能しなくなった現在では、ドル安を逆に利用して強い製造業を復活させ輸出で儲けるという方向に舵を切ったようです。
もっとも、製造業が国内になければ雇用の受け皿がなくなり、更にデフレ圧力が強まって全産業が破たんしてしまうリスクが高まりますので、ここは何としても雇用の受け皿となる製造業を復活させたいということでしょうね。
米国の雇用はまだまだ改善されていません。トヨタを叩くだけで雇用回復する訳はないですから、実質的な構造改革に乗り出す必要があります。

オバマが大統領に就任した後、G2 という言葉が大きく取り上げられ、今後は米国と中国とで世界経済を引っ張るようなイメージがありましたが、米国内の産業育成と雇用対策のために米国はここ最近本気になって中国の「元」のレートを国際的にも適正な水準にするよう圧力をかけています。
オバマもクリントンも中国からのチャイナマネーで選挙戦を戦ったと言われていて、中国に対しては敵対しないのがこれまでの民主党の筋書きであり、反面日本を叩くのはビル・クリントン時代と同じ予想された展開でもあります。
アメリカは中国も日本と同じように民社化させていけば、思うように操作できると考えていたふしがありますが、実際はそうはいかないことが漸く分かってきたようです。「中国は日本のようにアメリカに弄ばれることはない」と最近は中国自身が語っています。それに対してアメリカは台湾に武器を輸出してけん制をかけています。仲良くしているようで実はかなり激しい戦いが始まっていますが、Google の中国撤退の流れもあながち政治の世界と関係がないとは言えないでしょう。
長い目で見ると中国に勝ち目はないのですが、短期的にはどう展開するか、日本としても注目しておかなければなりませんね。
日本製品を直接アメリカに輸出すると叩かれるため、資本財やマザーマシンを韓国や中国に輸出し、そこで加工して韓国製、中国製の製品を作り出してそれをアメリカに買ってもらっていたのが実際の姿です。現在日本の家電製品はアメリカでも勢力があまりなく、代わってサムソンなどの韓国製品が市場を握っています。

しかし、韓国製品がアメリカで売れれば売れるほど、韓国の対日赤字が増大するという仕組みとなっています。また、中国が世界に輸出している製品も日本企業の技術と加工マシンや資本財で作られています。その意味では日本の技術で製品を作って中国製となった物が米国に大量に流れているのですが、これらの製品が日本に還流すると日本で製造した製品を価格差で駆逐してしまう結果となってしまいます。
これが、結果として日本で製品を製造できない産業構造となり、工場を海外に移転するか、そうでないなら最近廃止の方向に向かった派遣社員のような費用の安い要員を生みださなければ雇用自体を維持できない仕組みを作っています。
米国にとっては金融で儲けている間はこの構成でよかったのですが、米国自身が製造業や輸出で儲けようとするならば製品力と共に価格の優位性も必要になってくるでしょう。そうするとドル安・元高へレートを誘導するような働きが表面化してきます。
このまま中国が力を付けて行くと、かつての日本のように「このままでは米国の伝統的な産業や企業、米国を象徴する銘柄までが日本の円に買われてしまう・・」という警戒観が生まれ(もう生まれていますが)、プラザ合意のような展開を仕掛けられることを中国は警戒しているようです。
中国は日本のように弱腰で為替レートの「とんでもない」変更を飲んだりしないでしょうが、中国の経済を支えている輸出はその殆んどをアメリカが受け入れているという事実は変えられない訳ですから、一番大きなお客さんを失うというリスクにどう対処するのか、これは見どころです。
アメリカから見ると、中国で生産しない場合は工場をインドに移すというオプションがあり、中国の脅威に対しての予防策としてこれまでもミサイルや核兵器分野でインドを優遇していることは周知の事実です。
これから本格的な米中の揺さぶりが見られるでしょうが、その中で日本はどう動くべきか?
どこで利益を確保するのか?
でも日本の政治家の話を聞いていると、誰も何も考えていないように思えるのは私だけでしょうかね?
別にオバマに肩入れをしている訳ではありませんが、その演説を聞いていると「強いアメリカを作る」「競争して勝つ」「見物している時ではない」など、アメリカという国の産業を強くし、そして経済を立て直すというストレートな展開策が伝わってきます。
やはり国をリードするのはこのような堅固なビジョンを示し、そして「我々は強くなるのだ!」とはっきりと言ってくれるリーダーでなければなりませんね。
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