「PC 革命は終わりの章へ入った」、生き残りを賭けた戦い、未来の主導権争いはこれからが本番を迎える。
ということです。未来を大胆に捉えれば、大多数の人にとって現在のパーソナルコンピュータ(ディスクトップ等)は必要な物ではなくなり、ローカルな世界でコンピュータのハイパワーを必要とするのは「専門家」だけとなる。またクラウド化はコンピュータのハイパワーへの要求をも取り込んで処理してしまう可能性があり、身近にあるタッチスクリーン端末とクラウドを利用する処理で全てが収まる未来が見えてきたと言えそうです。
iPad の快進撃は Apple そのものの世界をも変えているようです。

iPad による Apple 製品自身への影響についての記事
リンクの記事にもありますが、図は iPad が発売されてなかったらその代わりに何を買っていたか?という質問への回答です。そうすると導き出される答えは以下のようになります。
* ネットブックやノートPC の代わりとして、新たに iPad を購入する
* iPod touch を買おうと思っていたが iPad が出たので購入を止めた
* 他の電子ブックリーダーは不要になる
* iPad をデスクトップ PC の代わりに購入するつもり
* ニンテンドーDS や PSP といった携帯ゲーム機を買うはずだったが、iPad の発売で購入を見送った
Apple 以外の製品への影響力も大きいですが、Apple の他の製品の買い控えも発生しているという現象です。
また、ネットブックへの影響は大きく、このままの状況が進めば「ネットブックは一過性の製品」として消滅する可能性も出てきました。以下の図はネットブックの成長率を表したものですが、既に「未来は暗い、もしくは、無い」と言える状況です。

そのような状況を見て HP は完全に将来を見越して Palm を買収し、WebOS を手に入れたことは前回の記事にも書きました。Apple からは遅れての展開になりますが、製品がこれまで以上に浸透する(新しい購買層が生まれる)可能性がある以上、この領域を狙わない訳にはいかないでしょう。今後 1年 - 2年 以内に誰の目にも「PC は終わった」と思える市場変化が起きそうです。
それでも、iPad は始まったばかりなのだ・・・
そうです、今の時点で iPad はまだ日本では発売されていません。
でも「You Already Know How to Use It」この殺し文句で iPad が世界を駆け巡り、同じような製品群が他社からも発売されていく中で、時代は確実に変わっていくでしょう。
Apple の歴史は古くその物語は多くの書物にもなっていますが、1990年代の後半 Windows が快進撃を進めた頃、誰もが Apple は破産すると見ていました。マーケットシェアーは小さく、OS にも問題が多く、一部のグラフィックス関係者や教育市場以外では見向きもされない状況でした。
当時、Steve Jobs は Apple から退き、Next Computer で Next OS を開発しましたが、その先進的な内容はやはり「早過ぎた」のかマーケットを取るまでにも至らず地中に潜ったかのように見えました。
Steve Jobs が Apple に戻り、Macintosh で再度市場を取りに行く中で、 Next OS の流れを組む Mac OS X が発表され、合わせて Intel CPU の採用という「禁じ手」とも思える戦略で Apple を再度メジャーな世界に押し出したことは記憶に新しいところです。
Mac OS X が発表された時、まだ CAD の 3次元化が実用的ではなかった時代に日本で唯一 Next 製品を扱っていた CANNON から Next Computer を借りて、自前の Object CAD なるものを作ろうとしていた昔を思い出しました。
オブジェクト指向という言葉自体がまだ認知されていない時代に Objective C という言語を使って操作環境を構築する試みは面白いものでしたが、市場自体が活性化されなければ製品は売れません。正直な感想として、Steve Jobs の先見性もここまでかと思いました。あれから長い歳月が流れ、今となってその技術が開花するということには驚かされます。執念という言葉がありますが、かならず受け入れられる時代が来るという確信がそこにあったのだろうと思います。

注意を引くためにたくさんの新製品を出したりせず、後々しっかりとした基礎を築けるものにとことん絞る。そして時代がそれを受け入れる時を狙う。そこに潜むコンセプトが Apple 復活の陰にあるということでしょう。そして長い低迷の中で Steve Jobs が学んだことは、生死を他者の手に委ねることを今後は決して行わない・・・ということです。
これは技術も(ソフトもハードも)マーケットも自前(コントロールできる範囲内という意味)でなければ背後に潜む恐怖から逃れる事は出来ない。不意打ちから被る被害を最小限に抑えることが、企業を存続させるための大原則だということですね。Steve Jobs はこの原則を iPad の世界に適用させて来ました。ある意味でこれは Steve Jobs の生死をかけた戦いのように見えます。
それが最近の Adobe との Flash を巡る大きな論争に繋がっています。
Apple が Flashを搭載しない理由・・・は既に公に発表されています。
その内容に対し沢山のメディアやブロガーがフォローし意見を述べていますが、純粋な技術論として Flash は重い、エネルギーを使いすぎて電池の消耗が激しい、バグが多い・・・などなどが理由として上げられてはいます。しかし一番重要なことは自前のエコシステムの中にサードパーティーを含めない事に尽きるでしょう。
Apple が作りだそうとしている世界は「普通の人が快適に使える」環境でしょう。2歳の子供から、99歳の老人まで誰でも使える環境にするには、プラグインのような仕組みは分かり難い。Google は Apple とは違う方法論でその世界を実現しようとしていますが、Apple は Flash のようなプラグインではなく標準の HTML5 でグラフィックスその他を処理し全体をさらに単純化出来ると考えています。
何も考えなくても使えるコンピュータの世界、家電製品のような感覚で使える世界、それが Apple が目指す世界だということですね。そしてその世界にウイルスやスパムなどの雑音が入らないように、エコシステムそのものを Apple が提供し、その環境の中で製品そのものが作られ、販売される。それが消費者の生活を豊かにするという基本コンセプトだということですね。
2歳児でも使える iPAd
99歳でも使える iPad
PC 産業は既に死んでいるとも言えます。
PC は完全にコモディティーとなり、ほとんどは新興国で製造出来るようになっています。これは製造費が何処までも低下し、製品価格も其れに連れて下がる。利益は殆ど無くなり、収益と規模を確保するために更に安い労働力を求めて製造拠点が国を超えて移動していくということです。この世界に留まっていては、Apple も Microsoft も未来はありません。
そこで利益を上げ続けるために必要なものは端末そのものではなく、iTunes や AppStore などに見られる流通チャネルと製品開発市場であると言えます。iPad は PC産業の終わりの始まりを示していますが、iPad の世界に多くの消費者を導き、誰もがそのエコシステムの中で生活することになれば、皆 Apple の流通チャネルを介して新しい物を手に入れることになり、全てを Aplle がコントロール出来ることになります。
音楽の世界は既に iTunes Store が握っていると言えます。iPhone で大成功した App Store こそこれからの産業を担う仕組みであると Apple は確信しているでしょう。
もし iPad が他社のデバイスに置き換えられたとしても、エコシステムを握っていさえすれば、継続するビジネスモデルを長く維持できるということです。
この仕組み自体は Apple が生み出した物ではなく、ファミコンというゲームの世界でニンテンドーが既に作り上げていたものと同じです。Apple はその仕組みを一般のコンピューティングの世界で実現し、胴元としての役割を担う戦略ですね。成功するかどうかはこれからの 1年 - 2年の取り組みに掛っているでしょう。

ニンテンドーの岩田社長は「これからは Apple を最大のライバルと見なせ」という訓示をしたことが記事になっています。
ニンテンドーの記事
これから見るとニンテンドーのライバルは既に SONY から Apple に変わっています。モバイルゲームの世界を考えた時、Nintendo のモバイルプラットホームが成功するためには、Apple の App Store を超えた使い易さを実現しなければなりません。
iPhone があれば公園のベンチに座って App Store を立ち上げゲームを 99セントで買えます。ただ iPhone を持っているだけで新しいゲームが出来る場面まで殆ど時間がかかりません。ゲームショップに足を運ぶ必要も無くなりました。
これは供給側にも当てはまります。Nintendo のゲーム機にソフトウエアを提供するには Nintendo のエコシステムに入らなければなりません。しかし、そのためには開発用システムを含めて大きな投資が必要です。既に僅かな数のゲーム開発会社しか出来ない作業となっています。
しかし iPhone の世界 (Apple のエコシステムの世界)には既に数え切れない程の開発者が世界中に存在し、膨大な数のソフトウエアが App Store に揃っています。今後は iPhone だけでなく iPad やその先の製品用のソフトウエアも揃ってくることは間違いないでしょう。合わせて忘れてはならない事は、僅かな費用を負担するだけで、エンジニア個人がソフトウエアを Apple のエコシステムの中で開発・販売し、個別に収益を得ることが出来るという世界です。
アイデアと技術さえあれば自前の製品をマーケッティングという一番費用の掛る(費用が読めない)部分を通り越して直接販売できるというインセンティブは非常に大きいと言わざる得ません。市場規模が大きくなれば成るほどそこに良いアイデアが集まるという集中現象が起きます。
Nintendo はこの世界とどう戦うのか?
App Store は携帯電話の使える場所ならどこでもロードできる。iPad 3G もこれから同じように利用されるでしょう。Nintendo はこれまでゲームの世界に絞ったエコシステムを作り上げ莫大な利益を上げてきました。その世界に Apple は電話、タッチパネル、業界標準技術、そして誰でもが参加できる(ソフトを供給できる)エコシステムという要素を併せ持ってやって来たということです。
Android を含めたスマートフォンの世界は、Wii を持って世界を征服した Nintendo の領域をも崩し始めています。ひょっとすると来年頃には Nintendo 製の携帯電話が発売されるかも?知れませんね。
こんにちは。いつも勉強させていただいてます。会長挨拶のリンクから入るので、更新が入ったときに見ています。
返信削除Mac はインテルを採用してから…のくだりは、ほんとにその通りで…実は私、それ以前のCPUの68を作ってたモトローラで生産管理をしてたんですけど、まあ良かったことではあるけれども個人的にはちょっと残念なんです。
アップルがフラッシュを搭載しない理由、のリンクが切れてましたので報告します。みんな知ってるんでしょうけれど、私は知らないので調べてみようかと思います。
iPadがあればコンピュータは出番がなくなってくる、というのは現実自宅にあるので、実感するところであります。機械音痴の家人でも使いこなせ(設定とか全部私です…)、その状況に満足感を得ているので、ますます世界中に広がっていくことでしょう。