チュニジアのジャスミン革命は、アラブ圏における民主主義国家の出現を予見させる歴史的な大事件だと言えるでしょう。チュニジアは 1956年にフランスから独立し、57年に共和国になりました。
初代ブルギバ大統領の専制政治は腐敗し、1989年より大統領の座に居すわり続けたベンアリは、
「イスラム原理主義の脅威と闘う」
という大義名分を掲げ、原理主義者の運動だけでなく殆ど全ての政治的反対勢力、人権擁護運動、市民運動、労働組合など民主勢力を弾圧してきました。
その実態は、フランスへ亡命した活動家や知識人、人権擁護団体などによって指摘・摘発されていましたが、フランスをはじめとする西洋の民主主義国は、ベンアリ政権を「イスラム過激派および関連するテロに対する砦」であると見なして、反民主的な弾圧や閥族による腐敗政治・国富強奪などにも目をつぶってきました。
ベンアリ政権は 14%を超える失業率等の情報を隠してきましたが、労働市場では増加する高学歴の若者に対して低賃金の雇用しか提供できず、高学歴であるほど雇用が見つからない状況となっています。チュニジアの民衆が蜂起する発端となった昨年12月17日に起きた焼身自殺も、弱冠 26歳の高学歴の青年によるものでした。
フランスなどの西洋諸国がこうしたアラブの強権政治に目をつぶるのは、イスラム原理主義に対する恐怖と共に、安い労働力と比較的安定した環境が欲しいためです。そのためにはそこで人権が蹂躙されていても関係ありません。・・・これは日本の直ぐ近くにある何処かの国も同じですね。

ベンアリ政権をほぼ1カ月で崩壊させたジャスミン革命の速い展開は注目に値するものですが、運動を主体的に組織できる強力な野党が存在していないことは更に驚くべき事だと言えます。
ジャスミン革命は、富を貪る政権に対する市民の怒りの爆発によって成されたもので、その主体は普通の中産階級の人々です。この革命ではフェースブックやツイッターなどソーシャルメディアがその機能を発揮しています。しかしその背景は、政権が公共メディアを独占し統制していたため、国民はテレビやラジオを聞いても本当の情報は得られないことから、真実を知るためにアルジャジーラなどのアラブ語衛星放送やネットメディアを情報源にしていたことでしょう。情報を統制することが結果として逆の効果を生み出してしまったとも言えますね。
そしてこの動きは他のアラブ諸国に飛び火しています。
メディアの情報を統制することで国民に真実を知らせず、また暴動が発生したら軍や警察が徹底的にそれを弾圧する。そうして独裁政権は維持され長期化されて来ましたが、世界中のネット環境が進化していく中で、多くの国民がネットを通して真実を知り、独裁に対する批判が起こり、ソーシャルネットワークを介して瞬く間のうちに国民の総意が構成されています。
チュニジアのジャスミン革命では、最終的に軍が中立を保つ結果となり、大統領は国外逃亡してしまいました。

エジプトはチュニジア以上の長期独裁政権で、30年に渡って一人で政権を保持するムバラク独裁政権です。今後の行方はアラブ諸国の中でも大きな勢力を誇るエジプト軍がどう動くかにかかっています。
米国の CNN および FOX ネットワーク、また ALJAZEERA (アルジャジーラ)の Live Stream を見ると、戦車を操るエジプト軍の兵士が、周りを取り囲む民衆と握手をしている姿が映っています。この姿は、かつての冷戦の崩壊、ベルリンの壁が崩れる時にも見た光景と重なります。
こうなるとムバラクも何らかの対応をしないと自分自身が国外追放されてしまうでしょう。しかし、かの国の、かの天安門事件のときには多くの民衆が戦車で引き殺されたという事実もありますので、事態が平和な方向に進むかどうかはまだまだ油断なりません。この騒動で少なくとも 100人以上は死亡しているようですから。

ムバラク独裁政権はチュニジアの状況を参考にして、インターネットを遮断するという暴挙に出ています。Twitter も facebook も、テキストメッセージも出来ない状況ですが、それでも情報は世界に流れ出しています。
こうした情勢を受けて、クリントン米国務長官は 26日、「エジプト当局に、平和的なデモやインターネット上のやり取りなどを妨害しないよう求める」と声明を出し、デモ隊の強制排除や簡易投稿サイト・ツイッターの遮断に乗り出したとされる政府の対応を批判しました。また、オバマ大統領が 25日の一般教書演説で「米国はすべての人々の民主化への希望を支持する」と述べたことに触れ、これがエジプト国民にも該当すると指摘し、エジプト政府に政治改革の実行を求めた結果となっています。
これだけの情報からでは、独裁政権に対する民衆蜂起が起こり、それに対してアメリカは民主的で平和的な行動をするようにというコメントを発表した・・・ということにしかなりませんが、チュニジア、エジプトに対するこうしたアメリカ(フランス)の態度は、その他の親米アラブ政権を震え上がらせる結果となっています。
アラブの独裁政権が長続きしてきたのは、その背後にアメリカのバックアップがあったからです。アメリカは利害が対立するような国にはごり押しともいうべき民主化要求を突き付けたりしますが、利害を共有し、アメリカの国益になるような政権には、たとえそこで人権が蹂躙されていたとしても、平気で「見て見ぬふり」をします。

今回チュニジアで起こったことは、民衆の蜂起に対してアメリカはもう独裁政権を助けたりしない、つまり、見捨てるということです。少なくともオバマ政権はそうするということですね。見捨てる理由は「アメリカにはもうそんな余裕はない・・」「自分のことで精一杯だ!」ということでしょう。ひょっとしたら意図的に見捨てるという行為を選択しているかも知れませんが。
エジプトもサウジアラビアもたとえ独裁政権でもアメリカの後ろ盾があることがその力の証明でしたが、そうではないことが分かってしまうと、同じように民衆が抑圧されている国で、同じような革命の動きが始まります。
同じやるならオバマがアメリカ大統領であるこの時しかない・・ということですね。
ヨルダンでの首都アンマンで 28日、反政府デモの発生。
イエメンの首都サヌアの各所で 27日、サレハ大統領の退陣などを求めて約1万6000人がデモを実施。
シリアではインターネットが遮断された状態となっている模様。
また、アルジャジーラのニュースでは中国では現在 Egypt という検索キーワードが働かないように制限が入っているということ。
その他、モロッコ、ヨルダン、そして、アハマディネジャドの圧政に立ち向かう「緑の革命」を進めるイラン。
その後は、ロシア領の中央アジア、そして中国の新疆ウイグル自治区にまで広がる可能性を持っています。
中国にとっては、新疆ウイグル自治区で生活するイスラム住民とイスラム国家が連携し分離独立を目指す動きが起こることや、これまでの不満が極限に達しているチベット民族や他少数民族との連携が広がっていく可能性もあって非常な警戒が始まっていると想像します。日本にとって中東は石油の供給基地であり事実上の日本の生命線です。
中近東に動乱が発生すると日本の安全保障は大きく脅かされる事に成り、かつ、原油市場、商品市場が大きな影響を受けます。
この状況で、国益重視の立場から外交戦略をしっかりと練ることが今の日本政府に出来るのか?
甚だ疑問ですね。
菅直人首相は 29日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で講演しました。窮屈な国会日程を押して出席を強行したようですが、
「開国と絆」と題した抽象論を語り、世界の政治・経済の指導者が集まる絶好の機会に国債格下げ問題への反論も何もしなかったようです。
自分から「疎い」と言っていましたが、やはり全てに「疎い」ということなのでしょう。
早い話、ダボス会議で講演した・・・という名誉というかステータスだけが欲しかったのかも知れません。
菅首相は「ダボス会議への出席が悲願だった」と強調したようですが、英語は得意じゃない、元々外交に関心が薄い、経済音痴で官僚の案を鵜呑みにする、国益や国際戦略を考えたこともない、世界を相手に企業経営をした経験もない・・・、
という左翼・市民政治家がダボスで何を語れるというのでしょうかね。
語ったのは TPP を通して日本を開国するということでしょうが、TPP とは郵政民営化に失敗したアメリカが別の手段で日本の富を略奪しようとするオルタネーティブ・プランですから、彼が語る TPP とは即ちアメリカからの新しい年次改革要望書そのもののコピーでしょう。
確かに戦後の自民党の農業政策は間違いであり、失敗だったと言えるでしょう。しかし、TPP の根幹は単なる農業品目の関税撤廃ではなく、表の議論には登場しない(日本のメディアが意図的に情報を流さない)その他・沢山の課題を利用したアメリカの日本市場への進出であり、外国人の雇用問題、安全保障をも含めた国益そのものを論じなければならない内容です。
TPP 環太平洋戦略的経済連携協定 などと表現されていますが、GDP 換算すれば、その中身はほとんど日本とアメリカという 2国の協定と言っても良い内容です。もちろん中国は入っていない。それなら日米 FTA をやれば良いのに、なぜそうしないのか。
TPP が取り扱う項目は、農産品だけではなく、以下のような幅広い内容を含んでいます。
工業製品、農産物、繊維・衣料品の関税撤廃
金融、電子取引、電気通信などのサービス
公共事業や物品などの政府調達方法
技術の特許、商標などの知的財産権
投資のルール
衛生・検疫
労働規制や環境規制の調和
貿易の技術的障害の解決
貿易紛争の解決
これらの中で、日本がアメリカに対して利益を上げられるもの(優位なもの)がどれだけあるのか?
それぞれの分野でアメリカのごり押しが入り、良いところを持って行かれるだけでしょう。上記の各項目を見れば見るほどアメリカの優位性が透けて見えますよね。これまでもやられっ放しの内容なのに、今度は何の障壁もなく自由にアメリカが入り込んでくるようなものです。
オバマが掲げるアメリカの復活とは即ち TPP を利用して日本から富を奪い、アメリカの雇用と輸出を促進するということです。
菅首相は民主党が政権を取ったことで、政治(日本の政治は即ち、日米関係そのもの)の深いところでどのようなことが行われているかをはっきりと知ったのでしょう。そして政権を維持し自分自身が生き続けるためには「アメリカの言いなりになることが一番」ということを悟ったのでしょうね。
どちらにしても民主党が政権を取る原因となった公約(マニフェスト)とは全く違う政策を平気で推し進めている訳ですから、国民は完全に騙された結果になっています。これまでの推移をみれば、国民は政治家とマスメディアに完全に騙されている事がわかります。この実態はチュニジア、エジプト、シリア、等のアラブ独裁政権、中国共産党政権、などと本質的に変わりません。
尖閣の問題を取り上げるまでもなく、日本には情報開示や言論の自由が本当は無いのです。馬鹿丸出しのバラエティー番組を見て笑っている間に、知性も洞察力も感受性もボケてしまい、かつ、競争原理を排除し、自虐感ばかりを植え付ける教育や「ゆとり」と称する愚民化政策、誰でも入れるようになってしまった低レベルの大学教育によって、チャレンジする意欲や勇気のない安定志向だけの職に有りつけない若者が溢れる社会となってしまいました。
ここで気がついて欲しい事は、アメリカやその他の国が悪いということよりも、それが世界の常識であるならば、それを上回る知恵と力を付けなければ富も財産も国土も文化も略奪されるという現実的な思考の必要性です。
このまま行くと国民の実質的収入が下がり続ける中に消費税アップという増税になり、さらに消費は低迷し、税収は下がり、そのために更に増税し、更に収入が下がるというサイクルに入ってしまいます。でも、よく考えて見れば、どんなに不景気・デフレになっても収入が下がらない身分を持った集団が日本には存在します。そう、公務員です。
日本の現状において、公務員は職業ではなく「身分」なのですね。日本には何があっても守られる「身分」を持った者(公務員)と、その他一般の国民とが存在するのです。
民主党はマニフェストで公務員の人件費を 2割削減すると言っていたはずです。
2割削減してもその他一般国民の平均よりはまだまだ高いでしょう。官僚の天下り問題もありますが、総額で計算すれば公務員の人件費の削減を実現しなければ、日本もギリシャと同じ道を進むことになってしまいます。
公務員の人件費を下げるとそれだけ国民の消費が低迷して、更に税収が下がるという話もありますが、削減した分をそのまま公共投資に回し、関連して銀行からの貸し出しを増加させるようにすれば、デフレ解消と共に本来の経済活性化の方向へと日本経済も向かうはずです。
公共投資とは鉄道や橋や道を作ることだけではありません。もっと日本の技術力が上がるような先端科学分野への集中投資や日本近海の資源探索、新しいエネルギー政策、アメリカに頼らない国防政策、など未来を見据えた投資先は幾らでもあるはずです。
しかし、今の民主党ではそれは不可能でしょう。民主党の支持母体を考えれば直ぐ分かることですね。自分で自分の首を絞めるような事を今の民主党が行うはずがない。いろいろと理由を付けて時間稼ぎをし、最後はうやむやにしてしまうのでしょうね。
もちろん何でもかんでも公務員が悪いと言っている訳ではありません。しかしそのように公約して実現した政府なのだから、そうしないのは背任行為です。殆ど全ての公約は「嘘」だったということが判明していますよね。それならば、「やっぱり出来ません」といって解散総選挙するべきでしょう。
それが日本人の魂を持った者の行動原理です。
それが不可能だということは民主党政権が出来る前から分かり切ったことでした。しかし、そのような情報を日本の国民はまったく知らないまま、テレビが言っているから・・、新聞にそう書いてあるから・・、どこかの評論家や学者が言っていたから・・、政治も経済も何も知らないタレントがバラエティ番組でそう言っていたから・・、と偏向された報道を信じ、結果として騙されているのです。
マスメディアが流す情報には必ず何処かにバイアスがかかっていて、誰かの利益になるか、もしくは誰かの不利益にならないように巧妙に編集されています。
必要な事実情報がそのまま流れているとは限らないということを良く知って、国民はもっと多くの選択肢(マスメディア以外)の中から情報を総合的に捉え真実を掴むようにしなければならないでしょう。
アメリカは日本から TPP を通して短期的な展望をまとめ、国内の支持を取り付けると共に、その後の展開を視野に入れて、親米アラブ政権を一つ一つ見捨てながら、本当のターゲットである中国を間接的に脅しているのでしょう。
国民の蜂起はもう止めようがない・・・共産党の独裁を維持したいのであれば、元レートを適切な水準にしろ、国内の人権問題を改善しろ、国際ルールを守れ、アメリカの言うことを聞け、と言っているようです。

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