2011年1月26日水曜日

Verizon の iPhone 4 がもたらす波紋

まず、iPhone4 の話と直接関係がない政治情勢について少し・・・。先週は、オバマ大統領と胡錦濤中国国家主席の会談に関するニュースが米国中を飛び交っていました。

残念ながら日本の首相が訪米し、オバマ大統領と会談してもそのニュースが流れることはまれにしかありません。

また日本の政治に関する話題が議論になることも「まったく無い」といっても良い米国ですが、中国の胡錦濤国家主席との会談はやはり注目されます。






米国の輸出や雇用問題、溢れ返る Made in China 製品、変わらない人民元レートなど 2012 年の大統領選挙に向けて点数を稼がなければならないオバマ大統領にとっては、胡錦濤国家主席との会談はその姿勢を示す絶好の機会でもあったようです。


米国の輸出増大策や雇用拡大策に関しては、現在日本で議論されている TPP 問題と大きな関わりがあり、これらは日本の国民がその実態をよく知らなければならない重要な項目なのですが、何時ものように日本の新聞や TV、経済評論家(御用学者)などのマスコミは意図して表面の情報だけしか流さず、隠された意図や仕掛けについて触れません。この件については機会を改めて説明をしてみたいと考えています。

さて、今回のタイトル Verizon から販売される iPhone4 についてですが、これは単に一つのキャリアーが人気商品を販売するということではなく、もっと大きな意味を含んでいると思います。



御存じのように(いや、日本の方はご存じないかも知れませんが)、Verizon は米国で最大の規模を誇るワイアレスキャリアです。つまり米国最大のワイアレス・ネットワークに iPhone が投入されるということですね。

ここ最近の Apple の業績はニュースで流れている通り非常に素晴らしいもので、数日前に発表された 2011年第1四半期(年末商戦期)の収支で見ると、Apple は同四半期中に、iPhone を 1624万台、iPadを 733万台、Macを 413万台、iPodを 1945万台売っています。結果として同四半期の売り上げは $26.74B(267億4000万ドル、約2兆2100億円)という驚異的な数字となっています。

以下は Verizon の iPhone 4 発売コマーシャルビデオです。


これまで iPhone は ATT から独占的に販売されていましたが、今後は米国最大の Verizon ネットワークからの購入が加わりますので、更に売り上げが伸びることが予想されます。但し、Verizon から販売される iPhone 4 は現行の ATT 版とほぼ同じ仕様ですので、当初から爆発的に売れるかどうかは分かりません。しかし、iPhone 5 が発売される頃を想定すると、LTE 仕様、即ち 4G という高速アクセス(次世代通信規格)を待って iPhone 5 に乗り換える Verizon ユーザーが沢山出てくるだろうと想定されます。

もちろん、Verizon はこれまでも沢山のスマートフォーン(Android 端末など)を販売していますので、既にスマートフォーンを使用しているユーザーが直ぐに iPhone に乗り換えるとは思えませんが、まだスマートフォーンに移行していない携帯ユーザーが iPhone への乗り換えを考えることは想像に難くないでしょう。

噂では、iPhone 5 はこの夏には登場しそうですね。新しい iPhone 5 は完全に再設計からやり直しているらしい・・・ので、改良点も多く 4G アクセスに加えて、Personal Hotspot 機能が付いていれば、高速な iPhone 5 を使って複数台の Wi-Fi デバイスをそれに接続して利用することが可能となり、それならば十分に投資効果が見込める魅力的な製品になりますね。

合わせて、iPad の新型も噂の範囲に入ってきています。

これも噂ではありますが、設計は既に完了し、中国の工場で今後数ヵ月間に 5~600万台を出荷できる体制作りが進められているそうです。

その中身は、今より薄くおそらく持ち易いフォームになるだろうし、可能性としては、超高解像度ディスプレイ(2048×1536)が高価格版として出てくるかも知れません。問題とされているスピーカーの改善と、ひょっとすると SD カードスロットが付くかも? という話も聞きます。







米国での年明けは CES と共に始まるようになって久しいですが、毎年 1月にネバダ州ラスベガスで開催される見本市 CES:Consumer Electronics Show での今年の注目点の一つが「タブレット」と「スマートフォーン」であったことは間違いありません。

その中で Apple が発表したものに iOS 4.3 ベーターがあります。

iOS 4.3ベータによって iPad に新しい「ジェスチャー」がサポートされることとなりました。この新しい「ジェスチャー」の動作は以下の動画を見てもらえば分かります。


iOS 4.3 によって iPad 上でのマルチタスキング機能がこれまでよりも遥かに便利になるでしょう。

今後の予想は、まず、2月10日に Verizon版 iPhone 4 がリリースされ、続いて、3月頃に iPad 2 がリリースされる。同時に全 iOS 機器の OS バージョンが 4.3 となり、その後、夏前には iOS 5 がリリース、夏頃には iPhone 5 などの端末で iOS 5 が採用される。・・・という流れですかね。

快進撃を続ける Apple ですが、Verizon がその世界に加わることによって、スマートフォーンとタブレットの世界が完全に市場を支配する姿が見えてきました。ちなみに Verizon は既に iPad を販売しています。

2011年に販売される全「コンピューター機器」の半数以上が「非 PC」になるのではないかと予想する調査会社(Deloitte)もあり、デスクトップ PC だけでなく、ノート PC でさえも、タブレットやスマートフォーンに押されて終焉を迎えるという状況が来るかも知れません。そしてそこで起こることは、それらの OS として Apple の iOS と Google の Android が市場を支配するということです。

オーっと、よく考えるとそこに Microsoft の影がありませんね。

Google の快進撃によって、クラウドへの対応を余儀なくされた Microsoft は、Silverlight を推し進め、Azure に夢をかけ、XBOX ではそれなりな地位を築きましたが、モバイルの世界で Google (Android) に抜き去られたと思ったら、その Google をも Apple が追い越して行きそうになって来ました。

もはや個人的な処理の多くはスマートフォーンでも十分賄えることが分かってきました。メールも、ソーシャルネットワークも、ゲームも、ビデオや映画の鑑賞も、写真撮影や映像の録画も、音楽を楽しむことも、地図検索や、買い物までも出来る端末。もちろんそこには電話機能があり、最近では無料の Skype までも使えるようになり、もちろん電子書籍の読書も出来ます。それらが大手キャリアから iOS や Android を採用して市場にあふれ、更にリビングの TV とも繋がるのですね。

それだけではなく、今世界中にあふれているソフトウエアは App Store や Android マーケットを通してダウンロード販売されています。ソフトウエア開発者がこうしたマーケットに自作のアプリケーション(ソフトウエア)を登録し、製品を直接販売し収益を得る道が確立されつつあります。これらの iOS 用アプリや Android アプリを作成するソフトウエアエンジニアは今後益々増加していくでしょう。このことは iOS や Android の周辺に面白くて役に立つソフトウエアが多く集まって行くことですから、特殊な分野を除いて Windows 対応のアプリケーションが相対的に減り、その地位を下げていくことになります。



科学計算や工学的な処理もサーバーによるクラウドの仕組みを利用するならば、スマートフォーンやタブレット端末から処理を依頼するだけで、計算結果が得られることになり、中間に位置する PC はもはや不要になる場面も多くなっていくでしょう。

以上のように考えると、Verizon の iPhone 4 がもたらす波紋とは、即ち、ソフトウエア市場構造の破壊、そう・・Microsoft 帝国へ止めを刺す結果につながるということです。MS-DOS から始まって Windows の世界でビジネスを広げてきた企業(私も含めて)は、今後の市場変化を見越して新しい展開に備えなければ未来は限定されたものになってしまう可能性があります。



そうした快進撃の Apple ですが、米国時間 1月18日に CEO Steve Jobs が病気療養休暇を公表しました。

癌から生還し、肝臓も移植している身の上でここまで Apple を復活・発展させたカリスマの病状に世界は注目しています。

米紙 New York Times は、Steve Jobs が今後も「重要な戦略的意思決定には関与する」にしても Apple には Jobs 氏に代わる後継者が存在しないと投資家は見ていると述べています。







また同じく人に注目を向けるならば、Google の CEO が Eric Schmidt から Larry Page に代わるという話も興味深い内容を含んでいます。


Schmidt が Google の CEO に就任したのは 46歳の時ですが、その時に Page はまだ 28歳、同じく Brin は27歳でした。Schmidt は Twitter で「日常業務を仕切る大人の監督はもはや必要ない!」とつぶやいています。彼のブログでは「CEOとしてのこの10年間を誇りに思っている。Larry 体制の今後 10年はより素晴らしいものになるだろう。Larry は Google を率いる準備が整った」と述べています。

Apple の驚異的な業績が見えてくる前は、この Google の快進撃が業界のニュースであり、Microsoft を追い詰める本命として考えられていました。しかし今の Google には Microsoft よりも強力な相手、facebook が約 6億人のユーザーを抱えて立ちはだかっているように見えます。検索とオンライン広告の覇者である Google と言えども、ユーザーを囲い込んでいく facebook の中の世界では無力に見えてしまいます。



1月21日の発表によると facebook は最新の調達ラウンドで $1.5B(15億ドル)の資金を調達したようです。現在の企業としての評価額は $50B(500億ドル)となり、市場では facebook がいつ株式の公開を行うのかという話題で持ち切りになっています。

Google の Eric Schmidt が Larry Page に CEO の座を譲り、日常の忙しさを逃れて会長としてどのような役割を果たすのかを考えると、Schmidt は、逃げ切ろうとする Apple と勢力を増してきた facebook の間でより大きな仕事(企業買収、政府対策、各種業界対策、思想展開など)をこなす必要に迫られていることを認識したのだろうと思います。そして Google と言えどもそこに確かな勝算がある訳ではないということも想定されているように思えます。

Eric Schmidt が自ら動いた意味は何か? 今後の彼の行動の中に Google の未来の戦いの場が見えてくるでしょう。

そう言っている間に facebook からまた興味深い情報が出ています。

facebook はゲームデベロッパーに対して、「facebook が開発した独自仮想通貨:facebookCredits の利用を義務付ける」と発表するようです。

そしてもちろん今後も facebookCredits は現実の通貨と換金ができるものとなっています。



少し前に「何で facebook がそんなに脅威なのか?」と聞かれたことがあります。その問いに対して私は次のように答えました。

「まず、ユーザーアカウントが約 6億存在し、そのほとんどがリアルなユーザーであること」
「それら全ての個人情報を facebook が握っているということ」
「ユーザーの分布は英語圏が圧倒的に多いが、沢山の国に跨ってユーザーが存在していること」
「つまり facebook ワールドの中では既に国境が無い状態が出来上がっていること」
「6億という数字は殆どの国の人口よりも多いということ」
「facebook ワールドはそれなりにオープンではあるが、実質クローズされた世界であること。」

を挙げ、そして

「もし facebook がその世界の中で通貨に代わるようなものを発行したら、ある意味で本当のバーチャル国家が出来上がり、facebook の持つ論理で国家の運営が可能になること」

「そこでは実世界の為替レート制約を受けず、TAX の制約を受けず、法律の壁を越えた思考が可能になり、リアルな世界の敵味方とは異なるネットワークによって最後はリアルな世界がコントロールされる可能性まである・・・」

と説明しました。

もちろん、仮想通貨の発行などは各国の法律によって縛られているので、直ぐに facebook が何でも出来るようにはならないでしょうが、その影響力を軽く見る訳にはいかないでしょう。

「グローバル」とは即ち金融の自由化の促進であり、グローバル化の結果として資金が国境を簡単に超えるようになった現在、リアルな製造業は製造原価が一番低い国へ移動して生産しなければ価格競争力を維持できなくなっています。

また資金の調達は為替レートと調達利率の一番低いところで行われますから、あっという間に資金のキャリードレードが起こり、世界経済のバブル化とデフレ化を推し進めてしまいます。

そうした 20世紀後半から現在にかけて構築されてきた金融の仕組みの上を facebook が発行するバーチャル通貨が飛び越えて行くことが起こります。バーチャル世界で起こるであろう可能性についてここでは詳しくは述べませんが、これまでの常識を超えた仕組みが生み出されるかも知れません。

儲かりそうな話には直ぐに欲張りが集まってくるように、今後 facebook の世界には様々な事が起こるかも知れません。 facebook の時価総額がウナギ登りに上がっていくのも、未来の収益を見込んだ投資家たちの目論見の強さを表しているようにも見えます。

また、そこにはリアルな世界の敵・味方とはまた異なったバーチャルな世界の敵・味方が存在し、facebook での友達関係が、リアルな国際紛争を抑制したり、また新たな問題を生んだりするかも知れません。


1984年生まれの facebook の創業者 マーク・ザッカーバーグ が今後どのような方向でこの世界最大の SNS を運営していくか?

友達のネットワークは世界を救うのか?
新たな破壊を生むのか?


スマートフォーンやタブレットの中であたかも国家の如く行動する facebook これには興味が尽きませんね。
  
  

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