ネット等を通してその背景を少し調べてみると先日の国会でも田中議員がこの「オーランチオキトリウム」について質問をしていましたので、ある程度の情報が既に日本国内で認知されているようですね。
この番組を見ながら、「オーランチオキトリウム」は、核燃料だけでなく、東電、安全委員会、政府、官僚という仕組みそのものがメルトダウンしている日本のエネルギー政策の未来に大きな可能性を生む非常に重要な取り組みだと感じています。
「オーランチオキトリウム」という生物については昨年の12月頃に一般のニュースでも流れていますので、その内容を知っている人も多いと思います。これはオイルを作る藻類で、これまで研究されてきた他の生物と比べて 10倍以上の高い生産能力を示しています。いよいよバイオ燃料が本当の意味で実用化できる可能性が出てきました。
藻類に「石油」を作らせる研究はこれまでも日本の筑波大学を始め、世界中の研究機関が相当の資金を投入して行ってきました。特に米国では、1970年代から石油に代わるエネルギーの研究が活発となりました。
その中でも藻から再生可能な輸送用燃料を得る研究は 20世紀末までに一つの結論として「藻から生産される油は、陸生の油の採れる植物と比べて面積当たりの採油量が30倍にもなる」ということが分かっています。
その他米国で行われている例としては以下のようなものがあります。
アルジェノール・バイオフーエル社(Algenol Biofuels, Inc.) による「藻類の細胞からエタノールを取り出す技術」
石油メジャー-のシェブロン(Chevron Corp.) の「藻類を原料とするジェット燃料の研究」
グリーンフーエル社(Green Fuel Corp.) では、藻類の培養設備を発電プラントに隣接させ発電プラントの排ガスの CO2を吸収させながらバイオ燃料の原料となる藻を生産し、温室効果ガスの削減にも繋げる一石二鳥のシステム開発。
ソラジン社(Solazyme) は、すでに藻からのオイルを数千ガロン生産し、藻からのバイオジーゼルをそのまま用いて自動車(メルセデスベンツC320ジーゼル)のデモンストレーション・ロード走行テストが実施されています。
オーロラ・バイオフューエルズ社(Aurora BioFuels Inc.) からは、カリフォルニア大学バークレー校のタシオス・メリス教授が開発した開放池型システムによる藻類の培養技術を用いた総費用 2000万ドル(約20億円)のバイオ燃料生産プロジュクトの立ち上げが発表されています。
ペトロサン社(PetroSun Inc.) は、2008年4月に藻からバイオ燃料を生産する始めての商業プラントをテキサス州 RioHond に建設し、1100エーカーに及ぶ塩水池を連ね、毎年 440万ガロンの藻油と1億1千万ポンドのバイオマスを生産。また藻からバイオ燃料を生産する初の商用プラントのパイロットシステムを中国に建設することで、Shanghai Jun Ya Yan Technology Development Co., Ltd.と調印もしています。
日本でも慶應義塾大学先端生命科学研究所による微細藻のオイルを蓄積する代謝の仕組み(代謝機構)を効率化させる培養条件の研究。
産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門での、微細藻類を利用した液体燃料生産の研究。
また、農水省所管の財団法人、東京水産振興会の研究委員会からの報告では、大量養殖した海藻を利用して現在のガソリン使用量の1割弱に当たる約 500万キロリットルのエタノール生産が可能との試算結果も出されています。

以上のように世界各国で研究開発が行われていますが、「オーランチオキトリウム」を発見した筑波大学の渡邉信教授も、少し前までは「ボトリオコッカス」という淡水に生息する緑色の微細藻類が出す油を利用したバイオ燃料の生産を研究していました。
これまでの研究から、脂質を多く含んだ微細藻類のバイオ燃料の生産効率は、大豆やトウモロコシなどを原料にした場合と比べ最大 700倍程度高いことが分かっています。また合わせて「ボトリオコッカス」は、培養の過程で通常の植物より多くの二酸化炭素 CO2 を吸収して光合成することから、CO2 の大幅な削減に貢献する事が可能で、国内で消費される燃料をすべて藻類由来のバイオ燃料に置き換えれば、日本全体の CO2 排出量を 1990年比で最大 55%削減できると試算されていました。
しかし、これまでの「ボトリオコッカス」では生産コストの問題を解消することが出来ず、生産性を 10倍以上に高めなければ採算が合わないという課題がりました。
そうした環境の中で発見された「オーランチオキトリウム」は、オイルの生成量は「ボトリオコッカス」の 3分の 1ですが、増殖スピードが 36倍と速く生産効率は単純計算で従来の 12倍になるということです。
「オーランチオキトリウム」は水温 30度くらいで倍化増殖時間が 2時間。1ha の広さに深さ 1m の培養装置を作り 4日ごとに収穫していくとすると、年間約 1,000t のオイルが取れることになる。倍加時間を 4時間として 4時間ごとに 67%を収穫し、同量の新鮮培養液を継ぎ足すという連続生産システムにすれば年間 1万トン以上のオイルが取れる。
現在日本が輸入している石油量は約 1.9億t。連続生産システムを利用すると、2万haあれば 2億tの石油生産が可能となる。2万ha(200平方キロメートル)は霞ヶ浦の面積(220平方キロメートル)とほぼ等しい。
平成 20年度農林水産省の「耕作放棄地に関する現地調査」では、全国で 28.4万haの耕作放棄地が存在するため、そのうちの 10%を「オーランチオキトリウム」の連続生産システムの用地として利用すれば、日本の石油必要量は賄われる計算となり、石油輸入国から石油輸出国に変わることも可能ということになります。ちなみに、今回の東北地方の津波で塩漬けになってしまった土地が、約 2万ヘクタールということなので、ある意味ではそれらの有効活用という見方も出来そうです。
「オーランチオキトリウム」は光合成をしないという特徴があり、どのようにして増殖させるかという点に興味深いものがあります。筑波大学の渡邉信教授の考え方は以下のようになっています。

現在は下水等の有機排水を処理するために、まず固形物を沈殿させ、その後の一次処理水に活性汚泥というバクテリアの塊を投入しています。しかし、一次処理水には有機物が多く含まれているので、活性汚泥の代わりに「オーランチオキトリウム」を投入し、「オーランチオキトリウム」に排水中の有機物をエサとして与え、炭化水素を作らせることが出来ます。
また、「オーランチオキトリウム」が処理した後の二次処理水には、窒素とリンが大量に残っているので、二次処理水に「ボトリオコッカス」を投入し、更に炭化水素を作らせます。
炭化水素を抽出した後の「オーランチオキトリウム」や「ボトリオコッカス」は、動物の飼料やメタン発酵にも利用できると考えられています。
「オーランチオキトリウム」がどのような有機物でも分解できるのかどうかは今後の研究によるところが大きいでしょうが、水処理プロセスに藻類生産を組み込んで統合すべきという考え方は 10年以上前のアメリカ・エネルギー省の報告書でも述べられている内容ですので、この方向で検討していくことに間違いはないでしょう。
石油は燃料として使われるだけではなく、プラスチックなど化学製品の原料にもなっていますが、「オーランチオキトリウム」や「ボトリオコッカス」が作りだすオイルは石油の代わりになるのだろうか? 「オーランチオキトリウム」が作りだすものは「スクアレン」というオイルであり、「ボトリオコッカス」が作りだすのは「ボトリオコッセン」というオイルです。いずれも「トリテルペノイド」に属するオイルで容易に燃料化することが可能で、既存の石油会社が持っている技術を利用すれば、バイオポリマーをはじめとする化学製品の原料にすることもできるということです。
「オーランチオキトリウム」がこれから完全な実用化に向けて超えて行くべき課題として、
- 生産過程では「攪拌」(かくはん)に関わるエネルギーの消費量を何処まで押さえることが出来るか?
- 収穫過程での「凝集沈殿」「遠心分離」「フィルター処理」など、投入した凝集剤の回収方法や、遠心分離処理のエネルギー、フィルターのコストなどは?
- 抽出過程では、触媒の回収、藻を乾燥させるエネルギーコストなどは?
- また技術の海外流出、秘密漏洩防止をどうするか?
- そして、産業界を巻き込んだ投資の獲得が出来るか?
筑波大学の渡邉信教授は「10年以内に実用化できないと、世界が持たない。ただし、実用化にあたっては、スケールが大きい実験が必要。実験室内ではなく、プラントレベルでの実験を行い、コストの計算をしなければなりません。それには予算も、人手もかかります。日本はどこまで投資する気があるのか?そこが一番の問題です。」
「アメリカはエネルギーが国を守るという考えが非常にクリアです。そのための技術革新に対して国としてお金をつぎ込んでいる。日本はどうか?そこまでの危機感はあるのだろうか?」
「ここまでの研究は日本の税金で行われてきました。日本の皆さんに還元しなければなりません。そして、藻類からオイルを作りだす技術は日本だけではなく、世界全体を救うために必要です。技術で社会をいい意味で変える。これがイノベーションです。ほら吹き扱いもされていますが、私は日本を石油輸出国にしてみせますよ!」 と言っています。
色々な課題があるにせよ、日本がこの「オーランチオキトリウム」で石油の生産国になることが出来るということは、ビジネス規模として 250兆円のマーケットがあるということですから、是非とも大胆に取り組んで欲しいものです。エネルギーの確保がこれまでの覇権国を作ってきたという人類の歴史を振り返って見ても、日本が自国内でエネルギーの獲得が出来るということの重要性を認識すべきです。またこれは国の安全保障上の問題をもカバーする大きな課題であり、日本の明るい未来を作る基盤にもなる取り組みです。
しかし、世の中はそんなに甘くはないですよね。純粋な技術的問題とは別にこうした新しいエネルギーの登場に反対する勢力が存在します。それは石油利権の勢力、そして原子力利権の勢力です。
メタンハイドレードに関しても、実際は実用化出来る状況にあるにも拘らず、石油利権によってその道は閉ざされていると言えます。メタンハイドレードとはざっくり言うと凍った天然ガスのようなものですから、取り出して液化天然ガスのプラント技術を使えば実用化出来ます。特に日本海側に広がっているメタンハイドレードは掘り出すというよりは海底に転がっているのを引き上げるだけで活用できるのですから、これだけでも資源国の仲間入りが出来るのです。
韓国が竹島を手放さないのは、竹島周辺にもメタンハイドレードがあるからだとも言われています。「日本海」という名前に対して「東海だ」と拘るのにも理由があるのです。また、中国が尖閣諸島を狙うのも、周辺の・・天然ガスというよりはメタンハイドレードへの注目があるからかも知れません。世界は日本の資源を狙っているのです。しかし、石油利権とは即ち戦勝国(米国)利権ですから、敗戦国は石油メジャーやロシアのような天然ガス産出国から資源を買わなければならないという呪縛に縛られ、国民にはたとえ資源があっても「日本は資源がない国だ」「資源は買わなければならない」ということを様々なメディアや教育を通して刷り込んできたのが戦後の歴史であり、これこそが日本の政治体制でした。そういった意味では日本は決して独立した国では無いのです。自分の国の資源を自分で使えないのですから。
原発に関しては今回の福島の事故によって、東電、原子力保安院、官僚、政府、そして東大という凄まじい利権構造を見せつけられている毎日ですが、日本の電力行政を担うこうした東電利権がこれまでも再生可能エネルギーなどの実用化の道を邪魔し、潰してきたという歴史があります。各種メディアも東電からの資金が注ぎ込まれていて、結局何時まで経っても大本営発表というような嘘の上塗りしか報道できないのですね。
日本では「原子力の事故は起こらない」という安全神話が完全に崩れ、現在でも水蒸気と共に放射線が放出されているという事実は隠せません。技術を追求すれば原子力事故は防げると個人的には考えていますが、運用する側がこのように利権まみれでは、またどこかで必ず事故が起こるでしょう。原子力事故が発生すればその地域はもう 2度と使えなくなるような深いダメージを受けます。
東電幹部の一人は「収束までの 9カ月という期限はあくまで努力目標だ」と言っていますが、これは結局出来るかどうかは分からないということですね。出来るだけ余裕を取って責任を追及されるリスクを回避したいという表れです。実質はこれから何年かかるか分からないとも言えます。

「東電は大きくて潰せない」と言っていますが、賠償金を電気料金へ転嫁することはつまり国民が東電と原子力保安院の怠慢による人災のツケを払うということですね。もちろん増税で処理しても同じことです。電気料金は上図のように、コストに報酬を乗せた金額を基準にして算出するのですから、電力会社は競争もなく、かつ、絶対に儲かる仕組みになっているのです。高い報酬を得ながら、失敗してもそれを国民から徴収するというとんでもない考え方です。国民ははっきりと怒りを示さなければならないでしょう。政治家も官僚も東電もそして東大の教授陣もメディアも実は国民の見方では無いのです。
「直ちに影響が出ない」という表現が「子供や妊婦にとっては 5年、10年後に癌になる確率が高い」と言い代えられたら誰でもこりゃあ大変だということになりますよね。放射線は累積された量で危険度が決まるのですから、年月を追うごとに危険度は高まるということを知っておかなければなりません。
とにかくこうした環境の中で原子力発電を続けるのはやはり危険だと言えるでしょう。しかし、すぐに全ての原発を停止すると国民の生活に多大な影響が出ます。全体のエネルギー量を図りながら何年もかけて徐々に停止して行くことしかありませんね。そして決して稼働することのない高速増殖炉(もんじゅ)や核燃料サイクルで費やされる資金を新たなエネルギー開発に振り向け、日本を資源保有国に変えていくことが私たちの未来を作ることであり、地元、故郷というものを奪われた福島原発の被害者の方々に報いる道だと考えなければなりませんね。
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