Steve Jobs について私が語れることはそれ程多くはありません。Apple の製品を初めて見たのは Apple2 が登場する寸前の頃でしたが、当時そのような高価な玩具を買えるような余裕もなく、それ以前に PC の未来を想像するような意識もありませんでした。当時は電子楽器のサウンドにもっと自分なりな特徴を出したいという思いで、電子パーツを組み合わせてサウンドエフェクターを作ってみたりしていたのを思い出します。
次に Apple 製品を見たのは Lisa が出た時でした。Lisa の革新性と美しさを認めつつも、その後しばらくして勢いを増してきた NEC PC9801 や IBM-PC の MS-DOS の世界でのビジネス拡大の方に目が向いていきました。
続いて Macintosh が発売されますが、Mac は教育関係、印刷関係、一部のマニア向けという位置付けで、通常のオフィス・ワークや文書作成などは IBM-PC 互換機のシェアーが拡大し、PC と言えば IBM 互換機だという市場での認識が出来あがって行きました。
ビジネスとしての成功は IBM、Microsoft 陣営に持って行かれますが、革新的な製品、技術という面では Apple の取り組みには目を見張るものが沢山ありました。
1980年代に「漢字Talk」があり、 1988年には、「ナレッジナビゲーター構想」を発表しています。この中では現在においてもまだ到達していない我々の未来が描かれています。良く見ると今の iPhone, iPad に通じるユーザーインターフェースが既にここにあることが分かります。
「ナレッジナビゲーター構想」を発表したのは 当時の Apple CEO ジョン・スカリーですが、この時点では Steve Jobs は既に自分が採用したジョン・スカリーによって退社(クビ)させられています。
1990年代に入ると TrueType フォントの仕様が発表され、また QuickTime がリリースされてより美しく、映像化された世界へと Apple は進みます。また PDA という世界を広げたのもこの頃の Apple でした。
モトローラーの MC68000 シリーズのチップを採用して PowerBook を発表しながら Mac 乱造といわれる時代に入りますが、パソコン史上初の CD ドライブ搭載機や「音声認識テクノロジー」、「Newton」の発表、初のカラー液晶「PowerBook」を出したり、パソコン業界初のテレビチューナー内蔵モデル「MacTV」、など Microsoft が Windows95 を発表する以前から既に多くの革新的技術がそこにありました。Windows は Mac を真似ただけだと言われるのもそうした事実がそこにあるからですね。
しかしそのような革新的技術が必ずビジネスの成功を呼ぶかというと・・・そうではありません。Apple は確かに一部の強力なファンに守られていましたが、インテル、Microsoft が進める WinTel 陣営に押され、世界でのシェアーは年々下がり続けます。シェアーが下がるとそれに比例して Mac 用ソフトウエアを開発する企業も減っていきます。
正直な話 Apple はもう駄目だろうと考えていました。しかし Steve Jobs は NeXT Software.Inc で NeXT Computer を開発し、そこには非常に素晴らしい未来が見えていました。但し、それはあくまでも技術的な未来であってビジネスの成功ではありませんでした。当時 NeXT の技術レベルは高く、Windows が普及する前に CAD システムを GUI で動かそうとその使い方を研究した記憶があります。
1996年に Apple はその NeXT Software を買収して Jobs が Apple に復帰します。
以下は NeXTSTEP について情熱的に語る Steve Jobs の「ネクタイ姿」です。1992年頃のことですが、インテルの 80386 が主流だった MS-DOS の世界から見た、NeXTSTEP(元の技術は Mach カーネルと UNIX BSD からの発展系)の世界は驚異的でした。ちなみに今の iOS はこの NeXTSTEP の発展系です。
特に印象が残ったのが、ディスプレイ・ポストスクリプトとウインドウエンジン、Objective-C 言語、ランタイム、そしてオブジェクト指向のアプリケーションです。
とにかく、こんなことが、こんなにスムーズに出来るのか? という驚きの連続で、色々なビジネスの話を作り出して(架空の計画もありましたが・・・もう時効ですから)当時日本で唯一 NeXT を扱っていた CANNON から直接マシンを借りて来て、色々な可能性に付いて研究しました。
この Jobs の懐かしいビデオを見ると正直泣けてきそうになります。何としても美しい世界を作るのだ・・という彼の情熱は今も Apple の中に引き継がれ、20年近く経った今、遂に一部のファンではなく世界の誰もが認める Apple の業績へと開花したのだということが分かります。
現在の Apple の成功は Jobs がこうして命がけで作り込んできた日々の結果であって、決してビジネスを上手くやったという結果ではありませんね。その意味でも Microsoft とは対照的です。
さて、それ以降の話はもう誰でも知っている Apple の成功物語ですね。その中でもやはり後世に語り継がれるのは、以下のスピーチでしょう。
字幕キャプションは【CC】から英語日本語が選べますので、日本語でもスピーチの内容が分かります。またテキスト起こしをしてくれているサイトもありますので、そちらも参考にしてください。--> テキストが読めるサイトはここ。
人は皆「命」と向かい合った時にその自分の使命を知るのだと思います。
Steve Jobs が見つめた命の尊さは、今、Apple 製品の「美しさ」となって私たちに届けられています。
しかしそれよりも Steve Jobs がその人生を生きたその道程こそが「命」の大切さを私たちに伝えてくれます。
私たちは Steve Jobs がガレージから起こした Apple という企業が作り出した製品を手にする時、製品の美しさと共に人間としての行き方そのものを手に入れることが出来ます。
そして、Apple そのものが Steve Jobs が作った製品であり、それ以上に Steve Jobs は世界中に彼の意思を尊重し後に続こうとする者を作り出したと言えるでしょう。
今後何十年に渡って、Steve の歴史を知り、言葉を知り、その意志を感じた若者が新しい技術革新を生み出していくことでしょう。それこそが彼が作り出した未来であり、命をかけて残してくれた製品なのだと感じます。
人間、何時かは死ぬ時がきます。でも Steve の意思は何時までも語り継がれ生き続けると確信しています。
ありがとう! Steve!
私たちの未来を作ってくれたことに心より感謝します。
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