EMO Hanovver 2011 に行ってきました。EMO Hannover は世界最大の国際金属加工見本市と言われ、自動車産業、宇宙航空産業、機械学、設備管理、電気工学、精密工学、光学、金属加工産業、医療技術業界など、関連する業界全体から革新的技術や新製品が集結し次世代のトレンドを反映する場となっています。

イノベーションは機械設置面積を縮小し、ライフサイクルコストを最小化し、知的な製造計画を促進するソフトウエアサポートを生み出しています。そうしたイノベーションの表現の場である EMO Hannover の一つの特徴は、訪れる多くのビジターに投資や製品購入決定権を持つ者が多く、商談がその場でまとまる比率が高いことです。特にドイツ国外からのビジターはその86%がそうした購入決定権を持つ者であると言われています。そうなると出展者側にも自ずと力が入りますね。
ドイツ ハノーバー(現地での発音は、”ハノーファ”に近い)は HANNOVER MESSE と言われる「国際産業技術見本市」が開催される所としても有名ですが、最近では CeBIT「国際情報通信技術見本市」、EMO Hanovver「欧州国際工作機械見本市」など多くの世界的な見本市を開催して注目されています。
ハノーバー国際見本市会場の広さは世界最大規模で約100万平米。展示面積は27館、498,000平米。
年間で 250万人のビジター(40万人以上が外国から)が訪れ、3万人の出展社(30%以上が外国から)が集まり、出展社に貸す小間スペースは約160万平米にのぼり、年間の売上は3億ユーロ以上(約400億円)となっています。
その広大な会場をイメージで伝えることは簡単ではありませんが、日本の誇る東京ビッグサイトの大きさが、東6ホール・西4ホール合計で約8万平米ですから、展示面積だけでビッグサイトのざっと6倍以上、全体面積では、うーん・・良く分からない程大きいとしか言えません。




HANNOVER MESSE から受ける印象とは異なって、ハノーバーの町そのものは落ち着いた歴史を感じさせてくれる趣のあるところです。町の中心からメッセまでは電車で簡単に行くことができます。電車の中は小ざっぱりとして綺麗で、地下鉄の駅も落ち着いた雰囲気でした。


次の写真は、ハノーバーの中央駅と、駅地下街の様子です。中央に見える像はハノーバー(ハノーファー)皇帝であったエルンスト・アウグストです。



以下のお城の写真は現在のハノーバーの新市庁舎です。この中に世界でここだけにしかない物がありました。それは曲がった状態で昇り降りするエレベーターです。このエレベーターを使うと新市庁舎の最上部まで登って市内を展望できるのですが、お城の外形に沿ってエレベーターが作られていので、その軌道がドーム状となっています。もちろん最上部からの展望は素晴らしい眺めでした。


歴史を感じさせてくれる街並み、古い旧市庁舎など、メッセで開催される最新のイノベーションと落ち着いた街並みとが上手く調和したドイツの風景でした。


さて、EMO Hanovver 2011 は「金属加工見本市」と言われるように、そこではマザーマシンと言われる機械を作る機械、工作機械・ロボットなどの技術や製品が広く紹介されています。こうした資本財の世界を牽引してきたのはやはり日本とドイツです。「ものづくり」の世界を築き上げた日本の技術は常に世界を一歩リードしてきました。その姿は EMO Hanovver 2011 でも間違いなく表現されていました。
この動画は日本の株式会社森精機製作所と提携関係にあるドイツ DMG 社とが共同出展した EMO Hanovver 2011 でのビデオです。2社合同で一つの展示館全てを借り切ってのブース構成は圧巻でした。
これは日本の誇るロボットを代表する FANUC の EMO Hanovver 2011 でのビデオです。Welcome to Yellow World という謳い文句を掲げて、その技術力を表してくれています。FANUC はこうした派手なロボットで代表されますが、実際には世界中の各工作機械メーカーが数値制御を行うコントローラーとして FANUC の技術を採用しています。
森精機と FUNAC の例を上げておきながら、その他の多くの日本メーカーの話をしないとなると「おッ! わが社の話は無いのか!・・・」とお叱りを受けますが、まあ、紙面の都合で・・・今回は・・お許しを・・。
1990年頃まで日本はその高度成長期にあり、こうしたコンピュータを内蔵した数値制御技術や、関連の加工産業、材料技術など新しい革新的な製品が沢山生まれました。私が生きていた CAD/CAM の世界でも多くの技術的なブレークスルーを通して、製造業の生産性は飛躍的に高まって行きました。当時はまだ米ソ冷戦の時代でもあり、日本そのものの国際的位置づけも米国の庇護の元での共産主義に対する防波堤のようなもので、日本の産業の発展は米国にとってもその国益に見合うものだったでしょう。
冷戦構造が崩壊し、世界が「グローバル」という名の基に経済的繋がりを深め始めてから、現在に至るまでに世界の市場は大きく変化しました。何よりも大きいのはやはり中国の世界進出ですね。まず、その人件費の安さを武器に欧米先進国が製造拠点を中国に作り、世界の工場としてその役割を果たし始めます。日本もプラザ合意後の円高の影響を軽減させ、グローバルな価格競争に負けないために積極的に中国市場に進出します。
私が米国に来た90年代後半には、米国での一般消費財は既に殆ど Made in China となっていました。米国は中国で生産した製品を自国に再輸入(米国企業の中国工場が生産したものです)し、その価格の安さで米国民の生活の面倒を見ていたようなものです。
一方、技術そのもので日本に立ち向かえなくなった米国製造業はその生産を中国工場に任せ、それまでにない金融改革で世界を股にかけてのギャンブルで大儲けします。しかし世界を巻き込んでのねずみ講は結局破たんし、リーマンショックとなって世界中を不景気に落とします。
米国は日本のようなデフレ経済に陥るのを防ぐために、ドル紙幣の印刷を続けます。これは米国に限らずヨーロッパも同じ政策を取って経済の破たんを防ごうとしてきました。
日本だけはこの政策に乗らない、乗れない、政策実行の自由がない、実はどうすればよいか分からない、誰かに押さえ込まれて動けない、政治家も日銀も官僚も日本国内の自分の立場と利益しか考えていない、本当は思考停止状態でポケーとしてるだけ・・・、いろいろな理由があると思いますが、早い話「何もしていない」ため、円が世界の通貨に対して上がり続けている状況となっています。
このような中で東北大震災という未曽有の国難が起こり、製造業のサプライチェーンが寸断され、日本の製造の動きが止まると世界の動きが止まってしまうという凄い現実を世界中が認識したとしても、結局信用できるのは円(¥)しかないと、全てが円キャリーに動くのが今の状況です。どれだけ円高に向かってもそれに対抗すべく、技術革新を続け、品質と生産性を上げ続けるのが日本企業、日本のモノ作り企業なのですが、そうした日本の素晴らしい技術があるが故に、それらの設備を購入して生産する中国を含めた BRICS 諸国および韓国での生産力・競争力が上がるという結果になっています。
カタログから拾った数値ですが、今年の EMO Hanovver 2011 に出店している日本企業の数は 76社、中国企業 99社、韓国企業 41社、その他の Brics 35社 程度でした。数だけでなく実際の EMO の会場での雰囲気も Brics 企業の勢いが確実に高まっていることを実感しました。元々性格の大人しい日本人はこうした世界の舞台で目立つことなど・・まあ、やりません、それでも日本人の影が薄いという感じは否めませんね。日本企業の強さはもちろん感じますが、そこで働く日本人が強く見えないのですね。
日本製の素晴らしい機械を使って安い労働力で安い製品を世界に供給する。そのような構成が Brics 各国および韓国で進められていますが、日本国内は円高とデフレ圧力に対応するためにさらに生産性を上げ、賃金の上昇を抑え、企業は何とか生き残りを図ります。そして、その技術がまた世界へ輸出され、更に安い製品と競争しなければならなくなります。良く考えると技術革新と生産性向上が日本の国民自体の首を絞めているようにも見えてきます。
実はこれは米国内でも同じ現象が起こっています。企業そのものの業績は決して悪くないのですが、雇用は一向に改善しません。雇用なくても設備と関連したソフトウエア技術の発展による生産性の向上によって企業の運用が可能となり、業績を出して生きていけるようになっているからです。最近私はこの現象を「生産性向上の罠」と勝手に表現しています。生産性を上げることによって収益が上がった「右肩上がり」の時代には何も問題はありませんでしたが、世界が繋がり(特に金融にはもう国境がない状態です)製造原価がより安いところに生産設備自体が移動していくようになった現在では、生産性の向上がそのまま収益の増加に繋がっていません。そこに更に為替レートの問題が重なってきますので、生きている、活動している場所そのものを良く考えて行動しなければ、努力が逆の結果を生むこととなってしまうかも知れません。
本来日本企業の生産性が上がれば、その分だけ新しい産業に財政投資がなされ日本国内のマネーサプライが増加しなければ、世界規模で経済を見た場合に釣り合いが取れないことになるのではないかと考えています。中国にも、インドにも、ブラジルにも、そしてその先にはアフリカ諸国にも沢山の国民がいます。将来的なお客さんとしての市場もそこにはありますが、それよりも安い生産能力が同時に無限にあるようなものです。そのような世界にデフレで動けないまま技術革新を進めることは日本国民が更に不幸になる道が出来るのではないかと危惧する今日この頃です。
昨日米国でアマゾンからタブレット型端末「キンドル・ファイア」が発表されました。価格は 199ドルで米アップルの iPad (499ドル)の半分以下となっています。もちろん「キンドル・ファイア」が直接 iPad と競合することはなく、この価格ならば iPad 所有者は「キンドル・ファイア」も同時に所有するでしょう。それ以上にこれまでタブレットを使用していなかったタブレット初心者は「キンドル・ファイア」を手にする可能性が高いと言えます。


アマゾンは同時にタッチスクリーン型の新型電子書籍端末「キンドル・タッチ」も発表し価格を 99ドル、従来型の「キンドル」の価格は 99ドルから 79ドルに引き下げたようです。時代はこれで完全にタブレット端末、タッチ端末へと移行し、このアマゾンの価格は Apple 以外の全てのタブレットメーカーの脅威となるでしょう。アマゾンの強みは Apple と同じく、既に強力な実績を誇るクラウドのサーバーシステムが存在していることで、端末での勝負をするのではなくコンテンツでのビジネスが出来る体制になっているというところです。
価格を破壊してもそれを上回るだけの仕組みを既に敷いていることがやはり重要です。生産性を上げて価格を下げただけでは結局は不幸になるだけですから、日本企業がこの先生き残っていけるような国際連携や政策を同時に進めて、世界という砂漠に水をやり続けて最後は枯渇して息絶える絶滅種となる道を回避しなければなりませんね。

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